太陽エネルギーで水素を作る「人工光合成」、2022年に実証試験へ自然エネルギー

エネルギーに関する技術開発の将来計画を政府がロードマップにまとめた。2050年を目標に「高効率石炭火力発電」から「メタンハイドレート」まで19分野の施策を集約した。注目すべきは太陽エネルギーで水素を製造する「人工光合成」で、実用化に向けた実証試験を2022年に始める計画だ。

» 2014年08月21日 11時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 経済産業省が「エネルギー関係技術開発ロードマップ」を8月19日に公表した。国の長期的な目標を定めたうえで、2050年までの施策を集約したものである。発電技術を中心にしたエネルギーの生産・供給のほかに、次世代自動車やエネルギーマネジメントシステムなどの消費・需要に関するもの、さらに水素の製造・輸送・貯蔵を含む流通に関する技術開発をカバーしている。

 合計で19分野にわたるロードマップの中で、具体的な実行スケジュールを明確にしたのは「人工光合成」だけだ(図1)。人工光合成は太陽エネルギーを利用して水から水素と酸素を作り、さらに水素と二酸化炭素から有機化合物を作る技術である。国内ではパナソニックが人工光合成でメタンを生成するシステムの開発に成功している。

図1 「人工光合成」の技術開発ロードマップ(画像をクリックすると拡大)。出典:経済産業省

 ロードマップでは水素と二酸化炭素から有機化合物を作るのに必要な「合成触媒」の開発が先行して、2017年に実証試験を開始できる見込みだ。一方で太陽エネルギーを利用して水から水素を製造するための「光触媒」、さらに水素を安全に分離するための「分離膜」の開発を進めて、2022年に全体を組み合わせた総合的な人工光合成の実証試験に着手する。

 人工光合成を実用化できると、二酸化炭素を消費して地球温暖化の防止に生かせるほか、燃料電池の原料になる水素を効率よく製造できるようになる。水素に関しては「燃料電池自動車」「水素製造」「水素輸送・貯蔵」「水素利用」の4分野でロードマップを策定した。いずれも6月に公表した「水素・燃料電池戦略ロードマップ」と同様の内容である。

 二酸化炭素に関連したロードマップとしては「二酸化炭素回収・貯留(CCS)」もある(図2)。火力発電所や工場などで大量に排出する二酸化炭素を回収して地下に貯留するための技術を開発する。排気ガスなどから二酸化炭素を分離・回収するコストを低減させながら、地下に貯留する大規模な実証試験を2020年代に開始する予定だ。

図2 「二酸化炭素回収・貯留」の技術開発ロードマップ(画像をクリックすると拡大)。出典:経済産業省

 このほかでは火力発電の高効率化に向けて、石炭火力と天然ガス火力の数値目標をロードマップで掲げた(図3)。石炭火力では現在の最先端技術である「A-USC(先進的超々臨界圧発電)」や「IGCC(石炭ガス化複合発電)」、さらに燃料電池を組み合わせた「IGFC(石炭ガス化燃料電池複合発電)」の熱効率を明記した。

 同様に天然ガス火力でも「コンバインドサイクル(複合発電)」の高効率化を推進する。ガス火力で最高の燃焼温度である1700度級のコンバインドサイクル発電を2020年代に実用化する計画だ。さらに中小規模の発電設備に適した「AHAT(高湿分空気利用ガスタービン技術)」の開発を並行して進めていく。

図3 「高効率火力発電」のロードマップ。石炭火力(上)と天然ガス火力(下)。出典:経済産業省

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