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» 2014年09月01日 12時30分 UPDATE

電気自動車:都心でも水素の充填いち早く、東京タワーのおひざもと

岩谷産業は東京都港区に東京都心初の商用水素ステーションの建設を開始する。液体水素を運び込み、1時間に6台の燃料電池車に充填可能だ。ステーション内部の電力を純水素型燃料電池で賄う計画もある。

[畑陽一郎,スマートジャパン]
yh20140901Iwatani_map_250px.png 図1 東京都港区と水素ステーションの位置

 東京都心に初の商用水素ステーションが立ち上がる。岩谷産業が選んだ立地は港区芝公園(図1)。東京タワーのすぐ南側の土地(1097m2)だ。「東京水素ステーション(仮称)の着工を2014年9月に予定、2015年3月の完成を目指す。

 「2015年の燃料電池車の一般販売に向けた設備であり、4〜5億円を投じて建設する*1)。将来登場するだろう燃料電池バスの利用も視野に入れている」(岩谷産業)。

 1962年に創業したトヨタ東京カローラ発祥の地であり、トヨタ関連会社から土地を借りて建設する。「水素の供給だけではなく、燃料電池車の普及に役立つショールームを兼ねる施設だ(図2)。純水素型燃料電池の導入を予定しており、ステーション内部の電力を全て燃料電池で賄うことを考えている」(同社)。同社は東芝など3社共同で純水素を利用した燃料電池システムの研究開発を2014年8月から開始している(関連記事)。

*1) 経済産業省の2014年度予算「燃料電池自動車用水素供給設備設置補助事業」の二次公募の補助対象である。補助金の額は2億2000万円。

yh20140901Iwatani_station_590px.jpg 図2 水素ステーションの完成予想図 出典:岩谷産業

液体水素を使う

 岩谷産業は2015年度までに東京、名古屋、大阪、福岡の4大都市圏を中心として20カ所の商用水素ステーションを自社整備する計画を表明している。2014年7月には国内初の商用ステーションを兵庫県尼崎市に開設(関連記事)、現在複数の商用ステーションの立ち上げを進めている。

 東京水素ステーションには千葉県市原市の液化水素製造プラントから液体水素を運び込む。「液化することで体積が800分の1になり、大量輸送できる。都心部に水素ステーションを建設する際、大型の施設を作ると土地のコストがかさむ。省スペースが求められる。貯蔵に必要な面積が小さい液体水素が向く」(同社)*2)

 貯蔵した液体水素は充填する前に気化させ、ドイツLindeの水素圧縮機で加圧、ある程度の量を蓄圧施設で保持し、設置した1台のディスペンサーで燃料電池車に充填する。「充填自体に要する時間自体は約3分と短いが、気化から蓄圧施設までの処理があるため、1時間当たりの処理代数は6台(10分/台)になる」(同社)。燃料電池車に対する水素供給能力は340Nm3/時、燃料電池車には70MPa(700気圧)で充填する。

*2) この他、液体水素温度では不純物が全て固化するため、純度を高めやすいという特徴があるという。

水素の価格水準は?

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2015年時点のステーションと水素の価格を予想している。水素ステーションは70MPa対応の施設が4億円、水素供給コストは1Nm3当たり90円*3)

 「(化学工業の副産物として生まれる)副成水素であれば、NEDOの予想コストよりも低い。燃料としての水素の価格を決める最大の要因は燃料電池車の普及ペースであり、(逆にいうと)水素燃料電池車の燃費が少なくともガソリン車と同レベルにならなければ普及しないと考えている」(岩谷産業)*4)

*3) NEDOが2014年7月に公開した「水素エネルギー白書」では製造法ごとの水素の製造コストをまとめている。苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)製造の副成水素は20円/Nm3、石油精製時では23〜37円、水の電気分解(水電解)では76〜136円とした。
*4) トヨタ自動車が2015年に発売を予定する燃料電池車の「燃費」は公開されていない。同社が2008年に開発した「トヨタFCHV-adv」では、110Nm3の水素で800km走行できた。つまり燃費は7.3km/Nm3ということになる。ガソリン車の燃費を20km/L、ガソリンの価格を150円/Lと仮定すると、1Nm3の販売価格が54円のとき、1kmの走行に必要な「ガス代」がガソリン車と同じになる。

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