バイオガス発電を中心に導入量が拡大、2020年に360万世帯分も可能自然エネルギー

これまでに固定価格買取制度の認定を受けた発電設備の規模では太陽光に次いでバイオマスが多い。バイオマス発電は燃料に応じて5種類に分かれるが、買取価格が最も高いガス化の処理を加えた発電設備が増加している。森林資源を活用した木質バイオマスの導入量も着実に拡大中だ。

» 2014年09月26日 13時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 再生可能エネルギーによる発電設備の中で、燃料を必要とするのはバイオマス発電だけである。固定価格買取制度では燃料によって5つの区分で買取価格を変えている。買取価格が最も高いのはバイオマスをガスに転換してから発電する場合で、太陽光発電を上回る1kWhあたり39円(税抜き)に設定されている(図1)。

図1 燃料で分かれるバイオマス発電の買取価格。出典:資源エネルギー庁

 資源エネルギー庁がまとめた最新のデータでは、2014年5月末までに認定を受けた170件のバイオマス発電設備のうち、約4割の67件がメタン発酵によるガス化の処理を伴うものだ(図2)。次いで廃棄物が40件、未利用木質が34件、一般木質・農作物残さが25件で、建設廃材を利用する発電設備は4件にとどまっている。

図2 固定価格買取制度で認定を受けたバイオマス発電設備の件数(累計)。出典:日本有機資源協会(資源エネルギー庁のデータをもとに作成)

 日本有機資源協会などが作成した分類表を見ると、原料が同じでもガス化してから発電する設備と直接燃焼させる設備がある(図3)。家畜の排せつ物をはじめ廃棄物の大半はメタン発酵方式でガス化することが可能で、買取価格の高いガス化を採用する事業者が多い。

図3 バイオマス発電の種類と原料。出典:日本有機資源協会ほか

 日本全体のバイオマス発電の導入可能量を把握するために、農林水産省が2012年に試算したデータがある。バイオマス発電に利用可能な廃棄物や木材などの量は年間に1億2000万トンに達して、そのうち6割強にあたる7700トンを2020年までに利用できる可能性がある(図4)。これをもとに年間の発電量を計算すると130億kWhになり、一般家庭で360万世帯分の電力使用量に相当する規模になる。

図4 バイオマスの年間利用可能量。出典:日本有機資源協会ほか(農林水産省のデータをもとに作成)

 政府は農林水産業を活性化する施策の1つとして、7つの省庁が連携して「バイオマス産業都市」を全国に拡大中だ。2018年度までに100カ所を指定する計画で、初年度の2013年度に16カ所を選定して支援を開始した。北海道が最も多く5つの地域が選ばれている。

 その中では北海道の東部で酪農が盛んな別海町(べつかいちょう)のプロジェクトが進んでいる(図5)。牛の排せつ物を利用して1.8MW(メガワット)のバイオガス発電設備を2015年7月に運転開始する予定だ。年間の発電量は960万kWhを見込み、一般家庭で2700世帯分の電力を供給することができる。

図5 「別海町バイオマス産業都市構想」の全体イメージ。出典:農林水産省

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