揚水式の発電所が北海道で運転開始、太陽光や風力の出力変動も吸収電力供給サービス

北海道で初めての揚水式による発電所が10月1日に営業運転を開始した。標高差が400メートルある2つの調整池のあいだで水を送り合って、水車発電機1基で20万kWの電力を供給する。さらに地域内の太陽光発電や風力発電による出力変動を吸収できるように周波数の調整機能も備えた。

» 2014年10月06日 07時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]
図1 「京極発電所」の所在地。出典:北海道電力

 札幌市から南西へ約40キロメートルの山岳地帯で、北海道電力が「京極(きょうごく)発電所」の建設を進めている。2002年に工事を開始して、ようやく1号機が2014年10月1日に営業運転に入った。北海道で初めての揚水式による水力発電所で、山中に造成した2つの大きな調整池を組み合わせて発電する。

 京極発電所では上部の調整池が標高890メートル、下部の調整池が486メートルの場所にある(図2)。この2つの調整池のあいだを地下に埋設した水圧管路とトンネルで約3キロメートルにわたって結び、水を上下移動させる構造になっている。水車発電機も地下にあって、上部の調整池から流れてくる落差369メートルの水流で水車を回して発電することができる。

図2 「京極発電所」の全景。出典:北海道電力

 水車発電機1基あたりの最大出力は20万kWで、合計3基を設置する予定だ。すでに稼働した1号機(図3)に続いて、2号機が2015年12月に営業運転に入る。さらに3号機は2024年度以降に営業運転を開始する計画になっている。合計すると60万kWになり、北海道の冬の最大電力(約600万kW)のうち1割をカバーできることになる。

図3 1号機の上部(この下で発電機と水車が稼働)。出典:北海道電力

 揚水式は夜間に余った電力を利用する水力発電の1種である。低い位置にある調整池の水を高い位置の調整池までポンプで引き上げて、需要が増加する時間帯に水を上から下へ流して発電する仕組みだ。電力を充電して放電する蓄電池と同じような働きをすることから、「巨大な蓄電池」とも呼ばれる。

 この特性を生かして、地域内の太陽光発電や風力発電による出力変動を吸収することも可能だ。京極発電所では入出力を瞬時に調整できるシステムを備えていて、送配電ネットワークを流れる電力の周波数を一定に保つ機能がある。最近になって全国各地で太陽光発電の増加による需給バランスの問題が浮上してきたが、その解決策の1つにもなる。東京電力も6月に、出力40万kWの揚水式による発電所を山梨県で運転開始した。

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