電力・熱・水素まで地産地消、大都市のエネルギーを分散型にエネルギー列島2014年版(27)大阪(1/2 ページ)

革新志向の強い大阪では、電力会社に依存しない分散型のエネルギー供給体制の構築が着々と進んでいる。電力や熱の地産地消を推進する大規模なスマートコミュニティを湾岸の埋立地に展開する計画だ。さらに関西国際空港を中心に水素エネルギーの製造・消費でも日本の先頭を走る。

» 2014年10月21日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 大阪市の中心部から10キロメートルほど西側の湾岸地帯に3つの大きな人工の島がある。「夢洲(ゆめしま)」「咲洲(さきしま)」「舞洲(まいしま)」と名付けられた埋立地だ。この3つの人工の島に最新の技術を導入して、エネルギーの地産地消を推進するプロジェクトが相次いで始まっている。

 1つ目は夢洲で取り組む「大阪ひかりの森プロジェクト」である。以前に産業廃棄物の最終処分場があった区域を再開発して、地域のエネルギー供給源になるメガソーラーを建設した(図1)。

図1 「大阪ひかりの森プロジェクト」のメガソーラー(左)、設置場所の「夢洲」の位置(右)。出典:大阪市環境局

 15万平方メートルに及ぶ広大な敷地に、発電能力10MW(メガワット)のメガソーラーが2013年11月に運転を開始している。年間の発電量は1000万kWhを超える見込みで、一般家庭で3200世帯分に相当する規模になる。発電した電力は全量を関西電力に売却して、クリーンなエネルギーを地域に供給していく。

 これと並行して隣の咲洲では、未来型の都市機能を目指す「咲洲地区スマートコミュニティ実証事業」に取り組んでいる。地区内のビルのあいだを電力と熱が行き交う独自のシステムを展開してスマートコミュニティを形成する計画だ(図2)。

図2 電力と熱を共有する「咲洲」のスマートコミュニティ構想。出典:大阪市計画調整局

 大阪府の咲洲庁舎を中心に、地区内を走る鉄道に沿って自営の電力線と熱導管を敷設して、複数のビル間で電力と熱を融通し合う試みである。このうち熱を融通する「サーマルグリッドシステム」の実証試験が、2つのビルを対象に2014年8月から始まった。

 サーマルグリッドシステムでは冷水と温水を連続的に流すことによって、各ビルの空調の熱源として利用することができる。ビル間を結ぶ「サーマルループ」と、冷温水のルートを切り替える「サーマルルーター」で構成する(図3)。このシステムは大阪市立大学が開発した。

図3 複数のビルを結ぶ「サーマルループ」(左上)、供給ルートを切り替える「サーマルルーター」(左下と右)。出典:大阪市立大学

 実証実験を2015年1月まで続けながら省エネ効果を検証する。咲洲地区の4カ所のビルに導入した場合には、CO2排出量に換算して約40%の省エネ効果を発揮する見込みだ。実証の結果をもとに2016年度に咲洲地区で実用化を目指すほか、海外にもサーマルグリッドシステムを供給することを計画している。

 同様に世界の最先端を行くプロジェクトとして、関西国際空港で始まった「水素グリッドエアポート」も大きな注目を集めている。空港の内外で利用する輸送車両に水素エネルギーを導入してCO2排出量を削減する計画だ(図4)。

図4 「水素グリッドエアポート」の全体像(画像をクリックすると拡大)。出典:新関西国際空港

 2014年度中に水素を燃料に利用した燃料電池(FC)フォークリフトの導入を開始して、2016年度にはFCバスを大阪国際空港とのあいだで運行する予定である。すでに空港内には発電能力が11.6MWのメガソーラーが2014年2月から稼働している。このメガソーラーの電力を使って水素を製造することも検討中で、水素を加えた新しい仕組みで再生可能エネルギーの地産地消を推進していく。

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