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» 2014年11月05日 13時00分 UPDATE

動き出す電力システム改革(21):固定価格買取制度による電力は宣伝できない、政府がガイドラインで規制へ

小売の全面自由化によって事業者間の販売競争は激しくなる。再生可能エネルギーによる電力で顧客を獲得する事業者の増加も予想されるが、その際の宣伝方法に関して政府はガイドラインを設けて規制する方針だ。固定価格買取制度の交付金を受けた電力は制約を受ける可能性が大きい。

[石田雅也,スマートジャパン]

第20回:「一般送配電事業者のインバランス料金、競争を促す新体系に」

 再生可能エネルギーによる電力を普及させる目的で、太陽光発電などの電力を高く買い取って販売する事業者が増えてきた。固定価格買取制度を通じて国から交付金を受けて、買取金額の一部を相殺する方法が一般的だが、そうした電力の宣伝方法を規制する検討が政府内で進んでいる。

 資源エネルギー庁は2016年4月に実施する小売の全面自由化までに、再生可能エネルギーによる電力の説明・販売方法にガイドラインを設ける方針だ。すでに新電力の各社は再生可能エネルギーによる電力の販売に注力し始めていて、「グリーン電力を供給します。」といった表現で太陽光発電などによる電力を宣伝している(図1)。

saiene_sales1_sj.jpg 図1 再生可能エネルギーによる電力を広告・宣伝する例。出典:資源エネルギー庁

 ところが2014年10月30日に開催した電力システム改革の制度設計ワーキンググループの会合で、資源エネルギー庁は再生可能エネルギーによる電力の説明・販売方法に厳しい規制を設ける案を提示した。その案によると、固定価格買取制度の交付金を受けた電力を販売する場合には、再生可能エネルギーであることの付加価値を顧客に説明できなくなる。

 資源エネルギー庁は3通りのケースを挙げて説明・販売方法の可否を示した(図2)。再生可能エネルギーによる電力であることを説明できるのは第1と第2のケースで、固定価格買取制度(FIT制度)を利用しない場合か、同制度を利用しても交付金による費用の補てんを受けない場合のどちらかである。

saiene_sales2_sj.jpg 図2 再生可能エネルギーによる電力を付加価値として説明・販売することの可否(資源エネルギー庁による案)。出典:資源エネルギー庁

 第3のケースである固定価格買取制度を利用して交付金を受けた場合には、電力の購入者(需要家)に対して再生可能エネルギーによる付加価値を説明して販売することを禁止する。現実には買取制度の交付金を受けずに再生可能エネルギーによる電力を販売するケースは少なく、ほぼ全面的に宣伝を規制するのに等しい措置である。

 資源エネルギー庁の理屈はこうだ。固定価格買取制度の交付金は再生可能エネルギー以外の電力にも適用する「賦課金」で成り立っている(図3)。このため、賦課金の対象になる電力の付加価値はすべての利用者に帰属すると考えるべきで、特定の電力の説明・販売に利用するのは適切ではない、というのが理由である。

saiene_sales3_sj.jpg 図3 固定価格買取制度における費用負担の仕組み。出典:資源エネルギー庁

 さらに、「固定価格買取制度による再生可能エネルギーの導入拡大は、発電した電気の固定価格・期間での買取義務によって十分図られている」として、たとえ説明・販売方法に制約を設けても、再生可能エネルギーの導入拡大の障害にはならないと判断している。はたして、そうだろうか。

 小売事業者にとっては、再生可能エネルギーによる電力であることを説明せずに顧客に販売するメリットは小さい。顧客の立場から見ても、再生可能エネルギーによる電力を優先的に購入することが難しくなる。結果として、再生可能エネルギーの普及を阻害する可能性が大きい。

 このような規制を資源エネルギー庁が実施するとしたら、電力会社を保護するための施策と受け止められても致し方あるまい。小売の全面自由化を機に、原子力を利用する電力会社を敬遠する動きが国民のあいだで広がりつつある。そうした電源の種類を意識する利用者は再生可能エネルギーを選択する傾向があり、新電力にとっては電力会社から契約を切り替えるための有力な手段になる。

 最近では九州電力などによる再生可能エネルギーの接続保留に対しても、資源エネルギー庁の対応は甘いと言わざるを得ない。政府と電力会社が協調して再生可能エネルギーの拡大を遅らせ、一方で小売の全面自由化を阻害するようなことがあっては、日本のエネルギーの未来は暗い。原子力発電所の再稼働よりも前に、再生可能エネルギーの健全な発展を優先させることが多くの国民の期待だ。

第22回:「小売・発電事業者はネット経由で毎日の計画提出が必要、2015年10月めどに準備を」

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