古くても役立つ電池、リーフ24台分で電気料金削減エネルギー管理

日産自動車とフォーアールエナジーは、エナリスと協力して、リーフ24台分の使用済み蓄電池を日産先進技術開発センターに設置。2015年春から1年間実証実験を進め、3つの経済効果を確かめる。電力ピークカット、デマンドレスポンス、インバランス削減である。

» 2014年11月19日 14時30分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
図1 神奈川県厚木市と蓄電池の設置位置

 電気自動車「リーフ」の使用済みリチウムイオン蓄電池を利用して、電気料金の削減などを狙う取り組みが始まった。

 日産自動車とフォーアールエナジーは、エナリスと協力して、リーフ24台分*1)の使用済み蓄電池を日産先進技術開発センター(NATC、神奈川県厚木市森の里)に設置(図1)。2015年春から1年間実証実験を進める。

ピークカット効果は分かりやすい

 フォーアールエナジーはプロジェクト全体を管理し、蓄電システムを提供、設置する。容量は約400kWh。システムのパワーコンディショナーの出力は250kWである。

 「NATCのピーク電力は3000kWであるため、計算上は蓄電システムを導入するとピーク時の1割を賄うことが可能だ」(日産自動車)。ビルの電気料金のうち、基本料金はピーク電力(最大需要電力)で決まるため、ピークカットの効果は大きい。「リユースの蓄電池を利用したシステムは経済性が高い。従って、ピークカットなどを実現するビジネスにより適していることを示したい」(フォーアールエナジー)。

 「今回の事例では具体的な電力料金削減率を公表していない。ただし、実証実験のスキーム全体での効果として、従来比最大10%程度の電力料金削減を目指している。これは当社が電力のマネジメントを行い、そこに蓄電池による充放電を組み合わせることで実現できる」(エナリス)。

*1) 「24台分という規模は、2つの理由から決まった。1つはNATCの使用電力の1〜2割の制御ができること。もう1つは蓄電池システムの設置スペースだ」(フォーアールエナジー)。なお今回、太陽光発電システムと組み合わせた実証は予定していない。

3つの目的をかなえるシステム

 実証実験の目的は3つある。第1は電力ピークカット。2つ目と3つ目は電力サービス全体でのメリット追求だ。

図2 蓄電池とエネルギーマネジメントの関係 出典:エナリス

 図2はエナリスから見た実証実験の姿。図中、緑色の田の字型に描かれた図形1つが例えばNATCに当たる。NATCのような「顧客」を多数集めて、システム全体をエナリスが管理する。実証実験の残る2つの目的は、このようなシステムの中で実現する。第2の目的はデマンドレスポンスによる経済効果、第3はインバランス料金削減の経済効果だ。

 蓄電池の導入先が多ければ多いほど、デマンドレスポンスで扱うことができる電力量が増える。系統の需給調整に役立つ。同じように新電力に課せられた30分同時同量の原則を守りやすくなり、原則を守れなかった場合のペナルティであるインバランス料金を削減しやすい。

 エナリスは「バッテリーマネジメントサービス」を2015年から開始すると2014年10月に発表している(関連記事)。顧客の建物にエナリスの初期投資によって10kW(9.9kWh)の蓄電池を設置し、今回の実証実験と似たサービスを提供する。「日産自動車、フォーアールエナジーと共同で実施する今回の実証実験と、10月に発表したサービスは異なるプロジェクトだ。例えば、蓄電池を誰が所有するかという点などが異なる。しかしながら、蓄電池を導入して得られる効果はよく似ている」(エナリス)。

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