酵素で発電して薬が速く効く、有機素材の「バイオ電流パッチ」蓄電・発電機器

電気の特性を生かしたユニークな医療用品が開発された。皮膚に貼ると微弱な電流を発生するパッチテープで、薬剤が体内の組織液の流れに乗って速く浸透する効果がある。テープの中には酵素で作った電極が組み込まれていて、空気中の酸素などと反応して電流が生じる仕組みだ。

» 2014年11月21日 15時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 東北大学の研究グループが酵素の反応によるバイオ発電の技術を応用して「バイオ電流パッチ」を開発した。パッチテープには酵素で作ったプラスとマイナスの2つの電極(アノードとカソード)のほかに、ゴム製の抵抗、糖と薬剤を含むゲルが重ねられている(図1)。

図1 酵素の反応で発電する「バイオ電流パッチ」。出典:東北大学

 2つある電極のうち1つでは酵素が空気中の酸素と反応して電子を受け渡す状態になる一方、もう1つの電極ではゲル内の糖を分解して電子を受け取る状態になる。そうすると電子の流れと逆の方向に電流が生じて、糖と一緒にゲルに含まれている薬剤が皮膚内の組織液の流れに乗って浸透する仕組みだ(図2)。

図2 「バイオ電流パッチ」の素材と原理。出典:東北大学

 医療の分野では湿布薬をはじめ、皮膚の表面から薬を投与する方法が日常的に使われている。薬の有効成分が皮膚内に浸透するまでには一定の時間がかかるが、微弱な電流を加えると浸透を加速する効果が確認されている。従来は小型の電池を組み込んだパッチが開発されてきた。

 これに対して「バイオ電流パッチ」は人体に優しい有機素材だけで作った点が特徴だ。ブタの皮膚で実験したところ、発生する電流は1平方センチメートルあたり最大で0.3ミリアンペア程度だった(図3の左)。人間が痛みを感じる可能性がある0.5ミリアンペアよりも小さい。

図3 ブタの皮膚で測定した経皮電流密度(左)、パッチを貼って1時間後の鎮痛剤の浸透状況(上:光学顕微鏡、下:蛍光顕微鏡)。出典:東北大学

 さらに薬剤の浸透状況を確認するために、鎮痛剤に蛍光分子を結合して顕微鏡で観察したところ、パッチを貼ってから1時間後には明らかな差が見られた(図3の右)。「バイオ電流パッチ」は家庭でも使い捨てが可能で、薬局などで販売できるセルフケア用品として普及を図る。

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