阪神の埋立地を支えた淡路島、30MWの太陽光発電所が再生自然エネルギー

寄神建設は2014年12月、子会社を通じて兵庫県淡路市に出力30MWの「淡路貴船太陽光発電所」を立ち上げた。農地や住宅地として使いにくい土地をうまく再生した発電所である。

» 2014年12月11日 15時30分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
図1 兵庫県淡路町と発電所の位置。本州側の神戸市の位置も示した

 「太陽光発電所を建設した土地は、約40年前から阪神間の港湾埋立用の土砂の採取場として当社が借りていた場所だ。1996年に採取が終わり、2000年に換地作業を完了した後、10年以上、用途がなくそのままになっていた」(寄神建設、図1)。

 大阪湾はほぼ100%が人工海岸に変わっている。そこに幾つもの巨大な人工島が浮かぶ。神戸市のポートアイランド(8.3km2)や六甲アイランド(5.8km2)、神戸空港(1.5km2)に必要な土砂は、六甲山地の西側の山を削って得たものだ。海岸まで土砂を運ぶ総延長14.5kmの須磨ベルトコンベヤが2005年まで40年間にわたって活躍。削った後の土地は産業団地や運動公園、団地として再利用されている。

 神戸市の対岸に浮かぶ淡路島でも大量の土砂の採取が続いた。ところが、大都市圏に直接隣り合った神戸市の場合とは異なり、淡路島の採取地では土地の再利用が進みにくかった。冒頭のような状況が続いていたことになる。

淡路島が太陽光アイランドへ

 このような状況を変えたのが、固定価格買取制度(FIT)の導入だ。住宅や農地として利用しにくい土地であっても日射が得られれば太陽光発電所として再利用できる。幸い瀬戸内海に立地する淡路島は全天日射量が高い。

 兵庫県淡路県民局交流室は「土取り跡地等を再生する大規模太陽光発電所の整備(総合特区事業)」を取りまとめている。同室によれば、2010年から出力がおおむね1MW以上の施設の発電が島内で始まっており、同室が把握した太陽光発電所は着工済みのものを含めて29カ所。うち24カ所が運転を開始している。合計容量は73.882MW。2015年7月には29カ所全てが運転を開始し、出力が115.062MWに達する。

 2014年12月に運転を開始した「淡路貴船太陽光発電所」(淡路市野島貴船)の出力は、島内で完成したものとしては最大の30MWである*1)。年間想定発電量は約3100万kWh。これは一般家庭9000世帯分の年間消費電力量に相当する。全量を関西電力に売電する。

 「太陽光発電所のユーティリティーサービスを提供する関西エネルギーソリューションに当社の計画を持ち込み、2013年8月に着工、完成に至った。発電所の運営会社(SPC)である淡路貴船太陽光発電所には当社が90%を出資し、残りの10%も当社のグループ企業である寄隆建設が出資している」(寄神建設)*2)。「48人の地権者の同意を得て完成した発電所だ。立ち上げに対し、当初事業費を95億円と発表したものの、実際にはいくぶん抑えることができた」(淡路貴船太陽光発電所の代表取締役である松村孝一氏)。

 関西エネルギーソリューションは設計・調達・建設(EPC)の他、管理・運営(O&M)を担当、発電所の設備も所有する。

*1) 2015年7月にはユーラスエナジー淡路が建設中の太陽光発電所(淡路市津名の郷)が完成する(関連記事)。出力は33.5MW。
*2) 寄神建設は子会社を通じて兵庫県加西市で太陽光発電所を建設中である。地権者から土地を借り、出力4MWの発電所が2015年3月に完成する予定だという。

どのような太陽光発電所なのか

 図2は淡路貴船太陽光発電所を北西の海上から見たところ。発電所から瀬戸内海(播磨灘)までの直線距離は約200mである。

図2 淡路貴船太陽光発電所の外観 出典:関電エネルギーソリューション

 山を削った跡地に建設した発電所であるため、約67haの敷地のうち、40haに太陽電池モジュールを設置した。設置位置は高度が異なる約20カ所に分かれている。「全体が一体として発電所として機能する」(松村氏)。

 LGエレクトロニクスの太陽電池モジュールを13万1250枚使用し、富士電機のパワーコンディショナー(容量1MW)30基と接続した。

 太陽電池モジュールの設置枚数を増やすために架台の設置角度として10度を選んでいる。「土砂を採掘した跡地であり、しっかりとした基礎を作り込む必要があった。単管ではなくコンクリート基礎を採用した。風速34m/sに耐える」(同社)。

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