海峡をめぐる自然エネルギー、太陽光から潮流まで電力源に生かすエネルギー列島2014年版(36)徳島

日本で潮の流れが最も速い鳴門海峡の周辺には膨大な自然エネルギーが広がっている。日射量が豊富な沿岸部ではメガソーラーが続々と運転を開始したほか、地域の森林資源を活用するバイオマス発電所の建設が始まった。潮流から電力を作り出す海洋エネルギーの開発計画も進行中だ。

» 2014年12月24日 11時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 徳島県は2012年から「自然エネルギー立県」を目標に、エネルギーの地産地消を推進している。県内に豊富に存在する太陽光・風力・水力・バイオマスの4種類の再生可能エネルギーを最大限に活用して、原子力や火力に依存しない分散型の電力供給体制を構築するのが狙いだ。

 まず先行して始まったのは太陽光発電の導入である。徳島県の中でも特に東部の沿岸部は日射量に恵まれていることから、この3年間でメガソーラーの建設プロジェクトが一気に広がった(図1)。

図1 徳島県内の主な太陽光発電所の設置場所と事業者。出典:徳島県県民環境部

 すでに運転を開始したメガソーラーでは、ソフトバンクグループのSBエナジーが2013年に稼働させた2カ所の発電規模が大きい(図2)。いずれも県有地に建設したもので、発電能力も同じ2.8MW(メガワット)である。両方を合わせると年間の発電量は640万kWhになり、一般家庭で約1800世帯分の電力を供給することができる。

図2 「ソフトバンク徳島臨空ソーラーパーク」(左),「ソフトバンク徳島小松島ソーラーパーク」(右)。出典:SBエナジー

 東部の沿岸部には工業地帯が広がっていて、石油会社や紡績会社の工場が数多く立地している。その中にコスモ石油がガソリンの配送設備として運営していた「徳島油槽所」の跡地があり、2014年7月に「CSDソーラー徳島太陽光発電所」へ生まれ変わった(図3)。発電能力は1.2MWである。

図3 「CSDソーラー徳島太陽光発電所」の全景(上、左下)、以前の油槽所(右下)。出典:コスモ石油

 さらに紡績会社の工場では、地域の間伐材などを利用した木質バイオマス発電のプロジェクトが進んでいる。クラボウが沿岸部の河口の近くにある繊維工場の中に、約30億円を投資して発電所を建設する計画だ(図4)。発電能力は6.2MWで、年間の発電量は4000万kWhに達する。一般家庭で1万1000世帯分の使用量に相当する規模になる。

図4 クラボウの「徳島工場」(左)、工場が立地する「辰巳工業団地」(右、造成当時)。出典:クラボウ、徳島県企業局

 発電した電力は固定価格買取制度を通じて売電する。未利用木材を燃料に使ったバイオマス発電の買取価格(1kWhあたり32円、税抜き)を適用できると、年間の売電収入は12億8000万円になる。運転開始は2016年4月を予定している。

 自然エネルギー立県を目指す徳島県だが、まだ再生可能エネルギーの導入量は多くない。太陽光を中心に発電設備が増え始めたところだ(図5)。これから風力・小水力・バイオマスの導入量が拡大しながら、将来に向けて海洋エネルギーの開発プロジェクトも始まろうとしている。

図5 固定価格買取制度の認定設備(2013年12月末時点)

 徳島県で最北端にある鳴門市には「渦潮(うずしお)」で有名な鳴門海峡がある。全国で潮の流れが最も速い鳴門海峡には、膨大な潮流エネルギーが発生する(図6)。県が潮流の実測値をもとに試算した結果では、海峡の中心部で最大3メートル/秒の潮流が発生して、発電規模のポテンシャルは260MWもある。

図6 潮流エネルギーの分布(左)、潮流発電の候補に挙げられている「小鳴門海峡」(右)。出典:NEDO、徳島県企業局

 ただし周辺の海域には多数の船舶が航行するほか、漁業や養殖業も盛んだ。発電設備を設置する海域を慎重に選ぶ必要があるため、当面は小規模の発電設備を使って実証実験に取り組んでいく。鳴門海峡よりも四国の本土に近い「小鳴門(こなると)海峡」が実証対象の候補に挙がっている。

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