無停電電源装置の活躍の場が広がる、生産現場向け蓄電・発電機器

オムロンは2015年3月から無停電電源装置(UPS)3製品「BA75T」「BA100T」「BA100R」の販売を開始する。産業用製造装置や検査装置のシステム、FA用のPC向けを狙い、生産品のトレーサビリティ確保などに役立てる。産業機器の筐体に収まるよう小型化し、不要な機能を除くことで低価格化したという。

» 2015年01月26日 09時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 工場の生産ラインにとって停電は大敵だ。仕掛品が無事であったとしても、生産品の製造情報が失われてしまっては、出荷後に問題が発生した場合に対応できなくなってしまうからだ。「安全性を確保するため、生産品のトレーサビリティ確保について市場からの要求が高まっている。生産品を全数検査し、画像データを残す場合も多い。そのために産業向けでもデータ保全のためにUPSが欠かせない機器になりつつある」(オムロン)。

 オムロンが2015年3月以降に販売を開始する無停電電源装置(UPS)3製品「BA75T」「BA100T」「BA100R」は、産業用製造装置や検査装置のシステム、FA(ファクトリーオートメーション)用のPC向けを狙う(図1)。価格はBA75Tが9万6000円(税別)、BA100TとBA100Rが11万円(税別)。

図1 無停電電源装置「BA100R」(クリックで拡大) 出典:オムロン

特徴は小型・低価格

 ICT向けのUPSは高性能化しており、ハイエンドの製品は各種の機能の数を競うようになっている。だが、製造業向けに必要な機能は違う。検査装置のシステムなどに常時電力を供給することが第一の目的だ。製造現場はサーバルームとは異なり、UPS用のスペースが用意されていないことも多い。

 そこで製造現場に必要な機能を絞り込み、小型で安価な製品に仕上げたという。「産業用に用いるハーフラックなどの筐体に収まるように小型化した。例えば、当社が従来製品化していたIT向けのUPSは奥行きがラックよりも少し長かった。小型化と低価格化を同時に満たすために、従来品で内蔵していた鉛蓄電池セルを3個から2個に減らした」(オムロン)。

 「BA-Rシリーズ」は幅38mm、奥行き315mm、高さ85mm。従来品と比較して、奥行きを15.9cm短くした。

 「BA-Tシリーズ」は幅128mm、奥行き345mm×高さ210mm(図2)。従来品と比較して体積を約74%に抑えており、高さ40cmのラックに向いた製品だ。「検査装置への内蔵にも向く寸法だ」(同社)*1)。従来のUPSを製造現場で利用しようとすると、筐体側の改造が必要になりコストアップ要因になっていたのだという。

*1) エレベーターや自動販売機などでも利用できるとした。

図2 無停電電源装置「BA100T」(クリックで拡大) 出典:オムロン

データ保全に十分な時間を確保

 出力はBA75Tが600W、BA100TとBA100Rが800W。停電時のバックアップ時間はBA75Tが6分(525W)、BA100TとBA100Rが5分(700W)。生産現場で利用しやすいよう、電源について2つの工夫を取り入れた。まず、消費電力を抑えて電気代を低減しやすい給電方式を採用した。電源環境の変化を常時監視し、常時インバータ給電方式と常時商用給電方式を、効率よく自動で切り替える。

 次に、UPSが故障した場合でも機器に対して電力供給ができるよう無停止バイパス機能を備えている。3製品とも出力コンセントは4個、蓄電池部分の期待寿命は5年である。

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