電力を年間100万kWhも削減する研究所、CO2排出量は20%少なくスマートオフィス

エネルギー利用効率の高いビルの研究開発を進める大林組が新たに大規模なエネルギー管理システムを稼働させた。東京都内の研究所にある10カ所の施設を通信ネットワークで結び、電力の需給予測や気象の予測情報に基づいて発電・蓄電機器をリアルタイムに制御することができる。

» 2015年02月17日 13時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]
図1 「大林組技術研究所」の全景。出典:大林組

 大林組が新しいエネルギー管理システムを導入したのは東京都の清瀬市にある技術研究所である(図1)。研究所の中では「本館テクノステーション」が2014年度にエネルギーの使用量を実質的にゼロにする「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル」を達成する予定だ。この建物を中心にして研究所内の10カ所の施設の電力使用状況を最適化できるシステムを構築した。

 10カ所の施設のうち6カ所の屋上で太陽光発電設備が稼働している。発電能力を合計すると820kWにのぼり、メガソーラー並みの電力を供給することができる。さらに450kWのガスコンバインドサイクル発電機と500kWの大型蓄電池(容量3000kWh)を研究所内に設置して、全体を通信ネットワークで接続した「スマートエネルギーシステム」を構成する(図2)。

図2 「スマートエネルギーシステム」の全体構成(画像をクリックすると拡大)。出典:大林組

 本館テクノステーションにある監視センターでは、太陽光発電・ガス発電・蓄電池・商用電力の4種類の電源の状態をリアルタイムに把握する一方、各施設の電力需要や気象情報のデータを加えて需給状況を予測する(図3)。それをもとに3つの運転モードを設定することが可能になっている。

図3 各施設の電力使用状況を見える化した画面例。出典:大林組

 1つ目の運転モードはランニングコストを最小化するもので、太陽光による売電収入とガス・商用電力の料金を計算しながら光熱費を削減することができる。2つ目は商用電力の使用量を最小化するモードで、需給状況が厳しくなった時などに適用する。3つ目のモードはCO2排出量を最小化する設定である。

 大林組の想定では研究所全体で使用する商用電力量が2012年と比べて2015年には約20%少なくなる。同様にCO2排出量も約20%削減できる。ピーク時の商用電力の使用量は3割以上も減る見込みで、電気料金の大幅な削減につながる。加えて災害発生時に電力・ガス・水道の供給が止まった場合でも、職員50人が7日間にわたって日常業務を継続できるBCP(事業継続計画)の体制を整備した。

 新システムではデマンドレスポンスの機能も備えている。電力の需要を30分ごとに予測しながら需給計画を策定して、必要があればデマンドレスポンスを実行することができる(図4)。監視サーバーから研究所内の職員に向けてメールを発信して、電気機器の使用量の低減を促す仕組みだ。

図4 エネルギー管理システムによる処理の流れ。出典:大林組

 大林組は研究所の実証結果を生かして、企業や自治体のエネルギーコスト削減を支援する事業を拡大する。政府も大型の補助金制度を通じてビルや住宅のエネルギー使用量の削減に力を入れ始めた。省エネと創エネを組み合わせたネット・ゼロ・エネルギー・ビルを構築する動きが急速に広がってきた。

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