壮大な夢「CO2フリー水素チェーン構想」、未利用資源と液化水素を組み合わせる和田憲一郎が語るエネルギーの近未来(10)(1/3 ページ)

何百年分もの膨大な未利用資源を生かして水素を製造し、大陸間を輸送する、貯蔵して需要先まで運ぶ。燃料電池車(FCV)向けの水素ステーションよりも大きな構想「ビッグピクチャー」を描いている企業がある。どのような構想なのか。どのようにして実現への道を付けるのか。今回、海外で水素を製造し、液化して日本に運び、利用するという「CO2フリー水素チェーン構想」を掲げる企業の担当者に聞いた。

» 2015年02月17日 07時00分 公開

 「CO2フリー水素チェーン構想」は水素の製造から始まり、運搬・貯蔵を経て、利用までを1本の太い鎖でつないだ壮大なプロジェクトだ。このような構想を描き、推進する川崎重工業の担当者に背景や現在の進捗状況、将来の展開について聞いた。同社の技術開発本部 水素プロジェクト部長である西村元彦氏へのインタビューを掲載する(図1)。

図1 川崎重工業の西村元彦氏

使いにくい褐炭を生かして水素を作る

和田憲一郎氏(以下、和田氏) CO2フリー水素チェーン構想についてお聞きしたい。このような発想はいつ頃、どのような経緯から出てきたのか。川崎重工業が手掛ける理由と合わせて、事業のメリットについても教えていただきたい。

西村氏 当社は、主に輸送機器やエネルギー、環境に関する製品を開発・販売している。液化天然ガス(LNG)が広がっていった時代から船舶、タンク、関連機器に関する極低温技術を磨いてきた。生産設備などのリソースも培っており、今回の水素ビジネスに関しても、これらの経験を生かすことができるのではと考えた。すなわち、将来のエネルギー・環境インフラに貢献できると同時に、当社の事業との親和性が高いことが理由である。

 CO2フリー水素チェーン構想は、水素の製造から輸送・貯蔵、そして利用までトータルでCO2の排出量を抑制しながらエネルギーを安定供給する方法として考えたものである(図2)。水素製造については、未利用資源である「褐炭」に着目した。褐炭は石炭と同じ程度の量、存在すると言われ、世界に広く分布している。しかし中に含む水分量が50〜60%と多く、かつ乾燥すると自然発火しやすい。輸送が困難だということだ。このため、主に地元の火力発電でしか利用されてこなかった。

 輸送ができないということは、海外取引ができないということ。未利用資源ということも合わせて価格が安価である。現在、多くの水素製造方法があるが、褐炭からの水素製造は最も経済的な方法の1つであると考えている。

図2 CO2フリー水素チェーン構想(クリックで拡大) 出典:川崎重工業
       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.