南国の特産品でバイオマス発電、サツマイモから鶏糞まで燃料にエネルギー列島2014年版(45)宮崎(1/2 ページ)

温暖な気候に恵まれた宮崎県では、サツマイモから作った芋焼酎や鶏肉などを特産品にして地域経済の活性化を図っている。その生産工程で発生する大量の廃棄物をバイオマス資源として再利用する取り組みが活発だ。林業と連携した木質バイオマス発電所の建設プロジェクトも続々と始まった。

» 2015年03月03日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 宮崎県は2013年度から「バイオマス活用推進計画」に着手して、県内に豊富にある未利用のバイオマス資源の活用に乗り出した。農林業を中心にバイオマス資源をエネルギーに転換することで、環境負荷の小さい持続可能な社会の実現と新たな産業の創出を目指している(図1)。

図1 宮崎県が目指すバイオマス資源の活用イメージ。出典:宮崎県農政水産部

 地域のバイオマス資源を活用した発電プロジェクトで代表的な例が2つある。1つは特産品の芋焼酎を製造する工程で発生する大量のカスを再利用する「サツマイモ発電」である。県南部の都城市(みやこのじょうし)で焼酎メーカーの霧島酒造が2014年9月に発電を開始した。

 霧島酒造では1日に製造する芋焼酎の約2倍にあたる最大800トンのサツマイモのカスが生じる。このカスに微生物を加えて発酵させると、メタンガスを生成して燃料に利用することが可能だ。従来は焼酎の製造に必要なボイラーの燃料に利用してきたが、それでも半分以上のガスが余っていた。

 新たに発電設備を導入して、余剰ガスをフルに活用できる体制へ移行した(図2)。年間の発電量は400万kWhになり、一般家庭の使用量に換算して1100世帯分の電力を供給することができる。発電した電力は固定価格買取制度で九州電力に売電する方針だ。バイオマス由来のメタン発酵ガスによる電力の買取価格は1kWhあたり39円(税抜き)で、年間に1億5600万円の売電収入を見込むことができる。

図2 「サツマイモ発電」のリサイクルプラント(上)、発電までのプロセス(下)。出典:霧島酒造

 焼酎のカスには豊富な栄養素が含まれていることから、一部は地域の畜産農家に飼料として供給する。さらに発酵後の残りカスを脱水して農業用の肥料としても提供している。サツマイモの栽培から始まって、焼酎を製造した後に再び飼料や肥料に還元する循環型のリサイクルの仕組みができあがった。

 もう1つの代表的なバイオマス発電プロジェクトは10年前から始まっている。2005年に県中部の川南町(かわみなみちょう)で運転を開始した「みやざきバイオマスリサイクル発電所」である(図3)。九州電力グループが地域の養鶏農家やブロイラー会社などと共同で始めたもので、鶏の糞(ふん)を焼却した熱で蒸気を発生させて発電する。

図3 「みやざきバイオマスリサイクル発電所」の全景(上)、循環型のエコシステム(下)。出典:みやざきバイオマスリサイクル

 発電能力は11.35MW(メガワット)もあって、年間に7000万kWhを超える電力を供給することができる。一般家庭の約2万世帯分の使用量に相当する規模で、川南町の総世帯数(約6000世帯)の3倍以上になる。

 1日に処理する鶏糞の量は周辺地域から回収する分を含めて440トンにのぼる。養鶏農家にとっては大量の鶏糞を処理する必要がなくなるばかりか、発電用の燃料として販売することで副収入にもなる。この鶏糞を利用したバイオマス発電でも、焼却後の灰を肥料会社などに販売して資源をリサイクルする仕組みになっている。

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