再エネから水素を作る「Power to Gas」、技術開発プロジェクトが始動自然エネルギー

日本の将来に向けたエネルギー戦略で極めて重要なCO2フリーの水素を活用するための技術開発プロジェクトが始まる。NEDOが中核になって、有力企業や大学が5つのプロジェクトを推進する。共通のテーマは再生可能エネルギーから水素を製造して利用する「Power to Gas」である。

» 2015年03月04日 09時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が2017年度まで実施する「水素社会構築技術開発事業(水素エネルギーシステム技術開発)」の対象になるプロジェクトが5つ確定した。日本の水素産業をリードしてきた民間企業や大学が連携して主要な技術の研究開発と実証を進めていく(図1)。

図1 「水素社会構築技術開発事業」の5つのプロジェクト。出典:NEDO

 5つのプロジェクトが目指すのは、再生可能エネルギーを水素に転換して利用する「Power to Gas」(電力から水素ガスへ)の実用化である。北海道や東北では太陽光と風力の発電設備を拡大する余地が大きく残っているものの、天候による出力変動や地域内の需給状況などから、電力会社の送配電ネットワークに電力を供給できない事態が想定されている。

 こうした再生可能エネルギーが作り出す余剰の電力を水素に転換することで、エネルギーを貯蔵・輸送して他の地域で再利用できるようにする狙いだ(図2)。電力を使って水を電気分解すると気体の水素ガスを製造することができる。その水素ガスを発電所の燃料や燃料電池自動車などに利用するほか、貯蔵・輸送しやすい液化水素に転換して首都圏などエネルギー需要の大きい地域で利用することも可能になる。

図2 再生可能エネルギーから水素を製造して利用するまでのプロセス。出典:NEDO

 水素を液化する技術では千代田化工建設が先行していて、NEDOのプロジェクトでは横浜国立大学と共同で再生可能エネルギーを水素で貯蔵・利用する研究開発に取り組む。千代田化工建設の液化技術は「有機ハイドライド」と呼ぶ方法で、ガソリンの主成分でもあるトルエンと水素を反応させて液化する(図3)。横浜市内にある同社の研究所で開発と実証を続けて、液化技術の有効性を検証する予定だ。

図3 再生可能エネルギーを活用した水素供給システムのイメージ。出典:千代田化工建設

 実際に北海道を対象にして実施するプロジェクトもある。豊田通商など5社と室蘭工業大学が道内の風力発電所と連携してPower to Gasの実証に取り組む計画だ。天候による電力の変動分を水素に転換して送配電ネットワークを安定化させる技術のほか、水素ガスを液化してから貯蔵・輸送して他の地域で利用するための技術も開発する。

 豊田通商などのグループは北海道や東北の再生可能エネルギーを水素に転換して東京で利用する「グリーン水素供給モデル」の検討を進めている(図4)。NEDOのプロジェクトを通じて必要な技術を実証したうえで、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて東京湾岸地域に水素を供給するためのサプライチェーンを展開する構想だ。

図4 北方地域の再生可能エネルギーを利用した「グリーン水素供給モデル」の展開イメージと課題。出典:豊田通商ほか

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