板ガラスのシェア9割、時を経て太陽光へ自然エネルギー

伊豆半島の採石場跡が出力約2MWの太陽光発電所に生まれ変わった。2008年に採石事業を終了するまで、60年以上役立ってきた約3haの土地を再び有効利用できた形だ。PE-TeRaSが事業主となり、juwi自然電力がEPC(設計・調達・建設)を担当した。

» 2015年03月05日 09時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
図1 静岡県西伊豆町と発電所の位置

 2015年2月に完成した大陽光発電所「TeRaS西伊豆」(静岡県西伊豆町宇久須)は、他に用途がない土地をうまく利用した設備だ(図1、図2)。

 旧宇久須村の当時、約60年前から鉱石の採掘が続いていたものの、2008年に資源が枯渇して事業が終了。未利用地となっていた土地だ。採掘されていたのは二酸化ケイ素を主成分とする珪石(けいせき)。ガラスの原料として重要であり、西伊豆町によれば、一時国内の板ガラス原料の9割を賄っていたのだという。珪石を取り出した土地に、ケイ素を大量に使った太陽電池を設置したことになる。

 太陽光発電事業を開始するのは、パシフィックコンサルタンツが再生可能エネルギー分野の事業参入のために設立したPE-TeRaS。同社は2013年10月につくば市で500kWの太陽光発電所を立ち上げており、今回は2カ所目となる。「パシフィックコンサルタンツは自治体に対する建設コンサルタントの経験が豊富だ。調査から設計までを担う。再生可能エネルギー関連の案件が増えてくることが見込まれたことから、当社が自社事業として取り組み、顧客のコンサルティング案件にフィードバックしていく。発電を通じて地域に新しい事業モデルを作っていきたい」(PE-TeRaS代表取締役の伊藤弘明氏)。

 太陽光発電所を建設した土地は、西伊豆町宇久須財産区*1)が管理する土地。「当社は主に財産区との協議・交渉に取り組んだ。所有者が1人だけに限られる土地とは異なり、手続きに時間を要した」(同氏)。

*1) 市町村合併の際に旧市町村が所有していた土地を新市町村に引き継がずに旧市町村の地域で管理、処分するために設置される行政組織。旧宇久須村が所有していた土地を現在所有している。

図2 TeRaS西伊豆の外観 発電所の東側から見たところ。出典:自然電力

施工が容易ではない立地

 太陽光発電所のEPC(設計・調達・建設)の発注を2014年6月に受けたのはjuwi自然電力だ。着工は2014年10月、2015年2月に完成した。敷地面積は約3ha、そのうち約2.1haに太陽電池モジュールを敷き詰めた。

 アクセスのよい立地ではないため苦労したという(図3)。「元採掘地で高地にあるため、大型車両が入れず、地元企業の協力を得て資材・機材などを搬入した。地面が固いこともいくぶん不利に働いた。基礎となる杭を打ち、コンクリートで根巻きを施した。施工方法を工夫したため、当初の工期通りに完成できた」(自然電力)。

図3 発電用設備を導入する以前の土地の様子 出典:自然電力

 カナディアン・ソーラーの太陽電池モジュールを採用。架台はドイツSchletterの製品を用いた。「当社が一般的に採用している架台だ」(自然電力)。パワーコンディショナーは東芝三菱電機産業システムから調達した。

 TeRaS西伊豆の出力は約2MW。事業費や年間想定発電量は非公開だ*2)。売電用の太陽光発電所であり、東京電力に売電する。完成後の管理・運営(O&M)はPE-TeRaSが行う。

*2) 2014年10月時点では、出力1.995MW、年間想定発電量2405MWhとしていた。

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