ただし、この結果には注意が必要だ。出力制御のルールは複数ある。これらのルールをどのような順番で適用するのかについては曖昧さが残っている。具体的には500kW以上の設備に適用される従来の「30日ルール」と、10kW以上の設備に提要される「360時間ルール」、10kW以上の設備に適用される「指定ルール」がどのような順番で適用されるのか、はっきりしない。
そこでJPEAのシミュレーションでは、30日ルールと360時間ルールの出力制御日数と時間が上限に達するまでは、極力同等の出力抑制率となるように制御されると見なして試算した。さらに360時間ルールと指定ルールの出力制御は、時間単位の一律制御を前提とした。10kW未満の設備に対する指定ルールは、他の全ての太陽光発電を制御した後、最後に適用されるとした。
九州電力の場合、既存の申し込みだけで「接続可能量」を超えている(実際には接続されていない)。そのため、「360時間ルール」は適用されず、いきなり指定ルールが適用される。
九州電力は2013年3月4日、出力制御量(年間抑制率)について、JPEAの試算とは異なる数値を公開している(関連記事)。例えば、2013年度最小需要(788万kW)を前提とした場合、「接続可能量」から300万kW追加した1117万の場合、出力制御率(年間抑制率に相当)が36%だとしている。JPEAの試算とは20ポイント以上違う。この理由として考えられるのは、出力抑制の時間単位だ。九州電力は日単位で計算しており、JPEAは先ほど説明した通り時間単位だ。
出力抑制の運用開始後は、時間単位の制御が可能だ。九州電力は日単位の制御にこだわらない方がよいだろう。
JPEAがシミュレーションを試算する際、前提とした要素は3つある。「電力需要実績」と「ベースロード等電源容量(以下、ベースロード)」「系統接続量」だ*4)。ベースロードは第3回系統ワーキンググループの配布資料に基づいた数値だ(図2)。
*4) 各電力会社が公表した2013年の時間ごと(8760時間)の実績値を電力量需要実績とし、系統接続量は今後の太陽光発電増加に伴う接続量の累積値である。
この中でベースロードは2つの理由から図2の値と異なってくる可能性がある。第1に原子力だ。ベースロードに占める原子力発電の割合は非常に高い(関連記事)。再稼働がどのように進むかによってベースロードの値は大きく変わる。
第2に地域間連系線の活用だ。現在の地域間連系線を効率的に使うと、ベースロードの値は小さくなる。さらに将来の広域連系の計画が次第に具体化してきており、これもベースロードを引き下げる効果がある(関連記事)。
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