寒波に見舞われた今冬の九州、最大電力は予想を50万kW下回る電力供給サービス

九州電力は毎年の夏と冬の需給率を停電の危険性がある97%で予想する。今冬も前年の実績を大きく上回る需要を想定して厳しさを訴えたが、実際には予想を50万kW下回った。ただし需要の減少を見込んでいた3月に寒波が戻り、供給力の低下もあって一時97%に近づく事態が発生した。

» 2015年04月03日 13時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 九州で今冬の最大電力が発生したのは、例年ならば気温が高めの12月中旬だった。12月17日(水)の最高気温は平年と比べて5度以上も低く、夜の19時台に1466万kWの最大電力を記録した(図1)。東日本大震災以降の冬では最高の需要だったが、供給力を増やしたことで需給率は92%台に収まっている。

図1 2014年12月〜2015年3月の最高気温と最大電力(画像をクリックすると拡大)。出典:九州電力

 さらに寒さが厳しくなる2月にも寒波に見舞われたものの、12月17日の最大電力を上回ることはなかった。今冬の最大電力1466万kWは、九州電力が10月末の時点で予想した1516万kWと比べて50万kWも少ない。それも当然のことで、前年の冬の最大電力は1438万kWしかなく、今冬の需要を過大に見積もったからである。

 九州電力が最高気温との相関をもとに分析した結果によると、今冬の節電効果は前年並みだった。震災前の2010年度と比べると電力需要は91万kW減っている(図2)。そのうち53万kWがオフィスビルなどで使われる業務用で、企業や自治体が新電力へ移行した影響が大きい。2016年4月に小売全面自由化が実施されると、同様の動きは家庭にも広がっていく。

図2 最高気温と最大電力の相関分析による電力需要の減少。出典:九州電力

 今冬は12月から2月までの3カ月間に需給率が95%を超える日はなかった。ところが例年ならば気温の上昇に伴って需要が減少する3月に季節外れの寒波が訪れて、3月10日(火)の19時台に需給率が96.9%に達した(図3)。

図3 最大電力と供給力の予想と実績(画像をクリックすると拡大)。出典:九州電力

 当日の最大電力は1368万kWで、12月17日と比べると大幅に低い水準ながら、九州電力の3月の予想を82万kWも上回っていた。しかも石油火力の「川内発電所」で1月下旬に発生したトラブルの復旧に時間がかかるなど、当初の計画になかった供給力の減少が重なった。

 九州電力が夏と冬の電力需要を過大に見積もる理由は2つ考えられる。1つは需給状況の厳しさを示して原子力発電所の必要性を訴えることだが、もう1つは万一のトラブルにも対応できるように余裕のある供給力を整えておくことにある。今冬は少なくとも第2の目的を果たしたとは言いがたい。2015年度の夏と冬の対策に生かしたいところだ。

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