風力・バイオマス分野の求人が目立つ、発電事業者の採用トレンドエネルギー業界の転職市場動向(4)

これまで再生可能エネルギー分野の求人で多数を占めていた太陽光関連が落ち着きを見せる一方で、風力発電とバイオマス発電の求人数が増加傾向にある。発電事業者の状況と採用ポジション、求められる経験やスキルなどを、ジェイ エイ シー リクルートメントの転職コンサルタントが解説する。

» 2015年04月24日 13時00分 公開

第3回「グローバルなキャリア形成と高年収が魅力、外資系エネルギー企業への転職」

 依然として積極的な採用が行われている再生可能エネルギーの分野だが、企業側の事業フェーズが移り変わるのに合わせて、採用の内容にも変化が見られる。案件の組成が一段落した太陽光発電に続き、第2・第3の発電方式として風力発電やバイオマス発電を手がける企業が増えてきた。現在は発電事業者が風力・バイオマス分野の人材を必要として、積極的な採用活動を展開している(図1)。

図1 太陽光・風力・バイオマス関連の求人数の比率。出典:JAC

 風力発電は昼夜を問わず発電できるために太陽光発電よりも効率が良くて、しかも固定価格買取制度の買取価格が維持されているので採算が合いやすい。こうした点から太陽光発電に続くコア事業として風力発電に力を入れる企業が多い。すでに風況解析や環境アセスメントを経て、建設フェーズへ移行した企業が増え始めている。

 一方のバイオマス発電では、事業の枠組みづくりから開始するスタートアップ段階の企業が目立つ。風力発電・バイオマス発電のいずれの場合も太陽光発電に比べると事業フェーズが初期にある。このため再生可能エネルギーの普及に対する熱意を持ち、立ち上げメンバーとして中核を担える人材が期待されている。具体的な職種を見ていこう。

1.用地取得から開発までを担う「事業開発」

 最近では期間短縮の動きはあるものの、用地調査から建設まで約5年という長期間にわたるプロジェクトの案件開発が必要になる。開発段階では自治体や地権者との交渉という営業的な側面も含めて業務内容は多岐にわたる。事業者は現在のところ用地取得に強い人材を必要とする傾向が強く、不動産会社で用地仕入れや開発プロジェクトに携わった経験のある人材を求めている。

2. 開発案件の実現に不可欠な「環境解析」

 発電所の建設にあたり、周囲の環境に及ぼす影響の調査や採算に合う発電能力の評価など、発電事業に必要な環境要因を分析する職種である。風力発電であれば、流体力学や統計解析に関する知識が必要になる。バイオマス発電では、林業や製材業など木材に関する専門知識が不可欠だ。環境コンサルティング会社で環境解析に携わっていた専門家が経験を生かして、新しいマーケットである再生可能エネルギーの分野へ転職する、という流れが目立つ。

3.大規模プロジェクトを管理する「設計・施工管理」

 発電所の建設フェーズを設計から施工管理まで、プロジェクトマネージャーとして担う。バイオマス発電の場合、主に火力発電プラントの建設に携わった経験が求められるため、対象者が限られていて人材が不足している。風力発電の場合も実際に建設に携わったことのある経験者は少ない。プラントエンジニアリング会社のプロジェクトマネジメント経験者で、特に設備や電気の知識を持つ人材が適している。

 発電事業者の多くは効率的かつ安定的な供給力を保つために、風力とバイオマスの事業化を推進しており、この2つの分野で求人数の増加も続いている。こうした流れは当面のあいだ継続するものと考えられる。今後エネルギー業界で転職を考える際には注目すべき分野のひとつである。

第5回「エネルギー業界の転職 成功の秘訣を探る」

著者プロフィール

由里 朋久(ゆり ともひさ、左)株式会社 ジェイ エイ シー リクルートメントEnergy Infra Plant Team電力業界(再生エネルギー、節電ビジネス、IPP、PPS)専任コンサルタント。転職コンサルタントとして10年以上の経験を持つ。

上野 浩幸(うえの ひろゆき、右)株式会社 ジェイ エイ シー リクルートメントEnergy Infra Plant Teamプラントエンジニアリング業界、建設コンサルタント業界専任コンサルタント。入社以来一貫してプラントエンジニアリングと建設コンサルタント企業を担当している。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.