下水の汚泥が年間3億3000万円の収入に、バイオガス発電を拡大する大阪市自然エネルギー

下水処理の過程で発生する消化ガスを使って、発電事業に取り組む自治体が全国に拡大している。大阪市は市内4カ所の下水処理場でバイオガス発電を実施する。発電設備の建設から運転・保守までを民間事業者に任せて、市は消化ガスの売却収入と土地の使用料を得るスキームだ。

» 2015年05月07日 13時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 大阪市は5月1日に民間事業者3社と契約を締結して、バイオガス発電事業に乗り出した。下水処理場では大量の汚泥を減量するために発酵(消化)処理が必要で、その過程でメタンが主成分の消化ガスが発生する(図1)。

図1 「大阪市下水処理場消化ガス発電事業」の実施イメージ。出典:大阪市建設局

 生物由来のバイオガスであることから、発電に利用すれば固定価格買取制度(FIT)の対象になる。この制度を利用して民間事業者が発電事業を実施する一方、大阪市は事業者に消化ガスを販売して収入を得る仕組みだ。対象になる下水処理場は4カ所で、発電能力を合計すると4090kW(キロワット)になる(図2)。

図2 発電事業の対象になる下水処理場と導入する発電設備。出典:大阪市建設局

 年間の発電量は2580万kWh(キロワット時)を想定していて、一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算すると7100世帯分に相当する。バイオガス発電の買取価格は1kWhあたり39円(税抜き)になるため、年間の売電収入は10億円にのぼる。運転開始は4カ所すべて2017年4月を予定している。

 発電事業を請け負う3社のうち、中心になるのは大阪ガスグループのOGCTSである(図3)。発電設備の設計・建設・保守はバイオガス発電で実績がある月島機械グループが担当する。大阪市は費用をかけずに、消化ガスの販売収入と発電設備を設置する土地の使用料を合わせて年間に3億3000万円を事業者から受け取る計画だ。さらに発電に伴う廃熱を利用して温水の供給も受けて、汚泥の発酵に必要な消化槽の加温に生かす。

図3 消化ガス発電事業のスキーム。出典:OGCTSほか

 大阪市内には現在12カ所の下水処理場がある(図4)。そのうち2カ所(中浜、津守)では固定価格買取制度が始まる以前から消化ガス発電を実施して、処理場の中で電力を消費してきた。新たに4カ所で消化ガス発電に取り組むことで全体の半数に広がる。残る6カ所にも順次バイオガス発電設備を導入して収入の拡大を図る見通しだ。

図4 大阪市の下水処理場。出典:大阪市建設局

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