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» 2015年05月11日 09時00分 UPDATE

和田憲一郎が語るエネルギーの近未来(12):水素ビジネスの分水嶺、事業継続が鍵を握る (1/3)

鶏と卵の関係にある燃料電池車(FCV)と水素ステーション。その普及にはまだまだ多くの課題が残されているが、普及を推進する業界団体はどういったビジョンを描いているのだろうか。主要な業界団体の1つである燃料電池実用化推進協議会(FCCJ)の取り組みを紹介するとともに、日本国内におけるFCVと水素ステーションの普及に向けた課題を探る。

[和田憲一郎(エレクトリフィケーション コンサルティング),スマートジャパン]

 燃料電池車(FCV)や水素ステーションの普及を図る上で、重要な役割を担うのは企業だけではない。業界を横断した推進団体も大切な役割を果たす。このような燃料電池推進の業界団体は、現在どのような活動を行っているのか、またFCVの将来をどのように見ているのだろうか。燃料電池を推進する業界団体は複数あるが、中でもその代表といえる燃料電池開発情報センター(FCDIC)と燃料電池実用化推進協議会(FCCJ)への取材機会を得た。

 前回はFCDICの取り組みについて、同センターの吉武優氏へ行ったインタビュー取材の内容を紹介した。今回はもう1つの有力な業界団体であるFCCJの取り組みとともに、日本国内におけるFCVと水素ステーションの普及に向けた課題を探る。FCCJは協議会という位置付けであり、公式取材は困難とのことから筆者が面談の際にまとめたものを、同協議会の事務局で企画部長を務める里見知英氏に確認していただく方式を採用した。このため、FCCJとしての統一見解ではないことをご了承願いたい。

燃料電池の実用化と普及に向け2001年に設立

 FCCJが設立されたいきさつについて説明すると、まず2000年ごろに固体高分子形燃料電池に注目が集まり始めた。その活用に関する国家施策を検討していた資源エネルギー庁長官の諮問研究会である「燃料電池実用化戦略研究会」において、家庭用や自動車用などの新たな分野における燃料電池の実用化に取り組むため、その検討や協議を行う場が必要との提言があった。

 これを受け2001年3月に民間の企業や団体によってFCCJが設立されることとなった。設立の具体的な目的は、燃料電池の実用化と普及に向けた課題解決の具体的な検討を行い、政策提言として取りまとめて国の施策に反映させるとともに、会員企業自らが課題解決への取り組みを進めることで、燃料電池の実用化・普及を目指すことにある。

 FCCJには現在110の企業・団体が参加しており、法人化はしておらず任意団体である。燃料電池の実用化と普及に向け、企業や業界間の垣根を越えた協力・協調と、政策要望取りまとめる協議の場として5年を期限とした時限的な組織として設立・運営されている。現在の活動は2016年3月を期限とする第3期目に当たる。協議会の運営資金は、参加企業から会費をベースとしているものの、さまざまな課題解決に向けて設置されている個別のワーキンググループ(WG)などの実務的活動は、各企業が主体的に参加することで運営が行われている。

水素ステーションの普及シナリオの策定へ

 FCVと水素ステーションの関係は両輪といえる。FCVは水素ステーションがないと普及できず、水素ステーションはFCVが販売されなければ営業ができないからだ。ここがFCVと家庭でも充電可能な電気自動車(EV)が基本的に異なる点である。

 このような“鶏と卵”の状況から脱却するため、FCCJはFCVと水素供給に関わる関係者で協議を行った。その内容をとりまとめ、FCVと水素ステーションの普及目安として2010年3月に策定したのが、FCCJの代表的な活動成果である「FCVと水素ステーションの普及に向けたシナリオ」だ(図1)。同シナリオではFCVの普及より早い速度で水素ステーションの設置を先行させることが必要であり、それに伴いFCVの普及が推進されると想定している。

rk_150511_wada01.jpg 図1 FCCJが2010年3月に発表した「FCVと水素ステーションの普及に向けたシナリオ」

 同シナリオでは、2025年におけるFCVの普及台数目標を200万台と設定している。これは政府が掲げる2050年に運輸部門における温室効果ガス排出量を80%削減するという目標がベースとなっており、この目標を達成するには、温室効果ガスを発生させないFCVをこれくらいのペースで普及させなければ難しいというバックキャスティングによって算出している。

 水素ステーションについては、2025年までに全国に1000カ所程度を設置すれば、それ以降はFCV・水素ステーションともに経済原理に基づいて自律的に拡大していくとしている。それまでの期間は民間の努力だけで普及させることは困難であり、国の施策と協調した取り組みが不可欠であるこという提言を行っている。なおこのシナリオの2025年という時期と具体的な数値目標は、FCVや水素ステーションの普及プロセスが、国の主導から民間の経済活動による普及に切り替わるまでの1つの指標として提案されたものである。

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