関西電力の料金が東京並みに上昇、小売全面自由化を前に全国最高レベルへ電力供給サービス

関西電力が昨年12月に申請した電気料金の値上げが認められた。家庭向けで平均8.36%、企業向けで平均11.50%の大幅な値上げになり、全国で最も高い東京電力の水準に一気に近づいた。6〜9月は軽減措置として値上げ幅を抑えるものの、販売量が減少して売上が伸び悩むことは必至だ。

» 2015年05月20日 11時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 関西電力が2013年5月に続いて2015年6月から再び電気料金を値上げすることが正式に決まった。標準的な家庭の電気料金で比較すると月額で597円、前回の値上げ前と比べると1613円の値上げになる(図1)。わずか2年余りで2割以上も上昇した。

図1 家庭向け標準メニュー「従量電灯A」のモデル料金(前回改定は2013年5月)。出典:関西電力

 ほかの地域の電気料金と比べても高さが際立つ。一般の家庭が使う「従量電灯」のモデル料金では、震災後に2度の値上げを実施した北海道電力が月額9000円を超えて圧倒的に高いが、それに続いて東京電力と関西電力が8500円台で肩を並べる水準になった(図2)。

図2 家庭向け「従量電灯」の料金(2015年6月分)

 しかも毎月の使用量に応じて課金する「電力量料金」の単価は北海道と同じレベルの高さで、月間に300kWh(キロワット時)を超える家庭では1kWhあたり33円台の単価になる。大量の電力を使う家庭では東京よりも高い電気料金を払うことになり、いっそうの節電が求められる。

 さらに値上げ幅が大きいのは企業向けだ。オフィスビルで利用する「業務用電力」の単価は1kWhあたり2円弱の上昇で、年間を通して13%程度の増額になる。毎月の電気料金に上乗せする「燃料費調整単価」を加えると、全国では東京電力の料金が最高だが、その次に高いのが関西電力である(図3)。隣接する北陸電力と比べると6円近い差がついた。

図3 企業向け「業務用電力」の料金(2015年6月分)

 関西電力は軽減措置として9月までの値上げ幅を半分程度に抑えるものの、利用者を引きとめる効果は小さく、むしろ4カ月間の売上を減らすだけである。2016年4月には家庭向けの小売も自由化されることから、企業に加えて家庭の顧客離れが進んでいく。

 電力会社10社の中でも関西電力の販売電力量の落ち込みは最も大きい。2014年度には前年比4.2%の減少で、1345億kWhにとどまった(図4)。ところが新料金は1457億kWhの販売電力量を前提に算定していて、100億kWh以上も違いがある。

図4 電力会社10社の2014年度の売上高と営業利益(連結決算)、販売電力量

 かりに2014年度と同様の販売電力量で推移した場合には、1kWhあたりの平均単価を20円で計算すると、年間の売上で2000億円を超える差が生じる。現実には再度の値上げの影響によって、2015年度の販売電力量は2014年度よりも減る可能性が大きい。

 大きな懸念点がもう1つある。原子力発電所の再稼働だ。今回の値上げ幅を決めるにあたり、「高浜発電所」の3号機と4号機が2015年11月に再稼働することを前提にした(図5)。しかし現時点で原子力規制委員会の適合性審査に合格していないため、11月の再稼働は困難な状況だ。高浜3・4号機の再稼働が遅れれば、火力発電の燃料費が想定を上回って収益を圧迫することになる。

図5 原子力発電所の運転計画(2014年12月時点)。出典:関西電力

 電気料金を値上げしても、関西電力の業績が大幅に好転することは期待しにくい。むしろ顧客離れを加速させる結果になり、小売全面自由化が始まる2016年度以降の売上が大幅に落ち込んでしまう懸念のほうが大きい。

 予定通りに原子力発電所を再稼働できても、売上が減れば利益は伸びない。小売全面自由化後は電気料金を値上げして売上を増やす方法もとれなくなる。値上げと原子力に依存する経営から早く脱却する必要があることは明らかだ。

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