2014年度の電力会社の決算がまとまった。10社すべてが売上高を増やして、合計で初めて20兆円を突破した。電気料金の値上げ効果のほか、燃料費調整額と再エネ賦課金による増加が大きい。一方で燃料の輸入価格が下がって利益の改善も進んだ。ただし関西電力だけは赤字が拡大している。
電力会社の2014年度の決算は関西電力を除いて増収増益を記録して、業績の回復が著しい(図1)。特に北海道電力と中部電力は電気料金を値上げした効果で、売上高が前年比9%台の高い伸びを記録した。本業のもうけを示す営業利益では東京電力が3000億円を突破したのをはじめ、8社が黒字になった。ただし販売電力量は全社で縮小していて、今後とも楽観できる状況にはない。
東京電力の収支の中身を見ると現状がよくわかる。売上高は前年度から1838億円も増えたが、燃料費調整額と再生可能エネルギーの固定価格買取制度に伴う収入増が合わせて3509億円もある(いずれも単独決算ベース)。一方で販売電力量が3.6%も減ったことで2140億円の収入減をもたらした。現実には国の制度に守られて売上高が増えているに過ぎない。
利益の面では燃料費の改善が大きく貢献した(図2)。特に注目すべきは、火力発電の熱効率の上昇による燃料費の削減効果が1590億円にのぼったことだ。東京電力は電力会社の先頭を切ってLNG(液化天然ガス)火力と石炭火力の高効率化を推進中で、その効果が早くも表れている。
10社の中で関西電力と九州電力の2社だけは赤字が続いている。それでも九州電力は前年度と比べて525億円も赤字を縮小したが、対照的に関西電力は赤字の額が拡大してしまった。最大の要因は販売電力量の減少で、その影響による売上高の減少が1140億円もある(図3)。
これまで問題視してきた火力発電の燃料費は321億円の増加にとどまり、燃料費調整額の増加(760億円)よりも小さくなった。2013年度には火力発電の燃料費が前年度から2436億円も増えたのに対して、燃料費調整額の増加(1210億円)は半分にとどまっていた。
燃料費の問題は収束しつつあるわけで、むしろ販売面の立て直しが急務と言える。2015年度は企業向けを対象に4月に実施した電気料金の再値上げ(家庭向けは6月から実施予定)の影響が懸念される。
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