英仏海峡から116基の風車で30万世帯へ、洋上風力発電で世界をリードする英国自然エネルギー

全世界で稼働中の洋上風力発電のうち半分以上を占める英国で新たに大規模なプロジェクトが動き出した。南東部の沖合13キロメートルの浅い海域に合計116基の大型風車を設置する計画だ。2018年に運転を開始して、英国の一般家庭30万世帯分に相当する電力を供給する。

» 2015年05月21日 11時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 新プロジェクトはドイツを拠点にエネルギー事業を展開するE.ON(エーオン)社の「ランピオン洋上ウインドファーム(Rampion Offshore Wind Farm)」である。英国の南東部に位置するサセックス州の沖合13キロメートルの海域に建設する(図1)。

図1 E.ON社の洋上風力発電プロジェクト(2012年9月時点)。黒丸は運転中、赤丸は建設中、白丸は開発中。左下に「Rampion」がある。出典:E.ON

 この一帯は英仏海峡の中でも水深が19〜40メートルと浅く、発電設備を海底に固定する着床式で設置することが可能だ。E.ON社の計画では1基の発電能力が3,45MW(メガワット)の大型風車を116基で構成する。合計の発電能力が400MWになる世界でも最大級の洋上風力発電所を目指す。

 年間の発電量は13億kWh(キロワット時)を想定していて、英国の一般家庭の使用量(約4200kWh)に換算して30万世帯分の電力を供給することができる。設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)は37%に達して、洋上風力の標準値30%を大幅に上回る。

 2017年の第1四半期(1〜3月)に風車の据付工事に入り、2018年内に運転を開始する予定だ。E.ON社はランピオン洋上ウインドファームの総事業費として19億ユーロ(約2500億円、1ユーロ=135円で換算)の投資を5月18日に決定した。

図2 洋上風力発電設備「V112-3.3」。出典:三菱重工業

 風力発電設備にはデンマークのMHI Vestas Offshore Wind社の製品を採用する。同社の主力機種「V112-3.3」の発電能力を3.3MWから3.45MWに増強する(図2)。MHI Vestas社は三菱重工業とデンマークのVestas Wind Systems社が合弁で設立した洋上風力発電設備の専門会社である。

 ランピオン洋上ウインドファームは英国政府が推進する洋上風力発電の拡大計画「Round 3」の一環で建設する。Round 3は英国の領海内にある海底を所有するクラウンエステート(The Crown Estate)が2009年に開始したプロジェクトで、2020年までに洋上風力発電を拡大して英国の一大産業に成長させることが目的である。クラウンエステートが選定した9カ所の海域を対象に、風力発電事業者が開発を進めている。

 英国は日本と同じ島国の利点を生かして、2000年から洋上風力発電の開発に取り組んできた。これまでに「Round 1」と「Round 2」で21カ所に合計3600MWの洋上風力発電設備を稼働させている。英国の洋上風力発電の累積導入量は2014年末の時点で4500MWにのぼり、全世界の5割強を占めている(図3)。

図3 国別の洋上風力発電の累積導入量(2013年末と2014年末。画像をクリックすると拡大)。右上は全世界の累積導入量。単位:MW(メガワット)。出典:Global Wind Energy Council

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