メガソーラーが50カ所以上で動き出す、風力は洋上へ、バイオマスは森林からエネルギー列島2015年版(8)茨城(1/2 ページ)

首都圏に近い茨城県で再生可能エネルギーの導入が加速してきた。すでに運転を開始したメガソーラーは50カ所を超えて、太陽光発電の導入量は全国で第2位の規模になった。バイオマスは木質を中心に広がり、風力では全国の先頭を切って洋上のプロジェクトが大規模に始まる。

» 2015年06月09日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 関東では茨城県の再生可能エネルギーの導入量が群を抜いている。特にメガソーラーの建設が相次ぎ、早くも県内の50カ所以上で運転を開始した(図1)。沿岸部から内陸部まで一様に広がっているのが特徴だ。各地に広大な用地が数多く残っていたことがメガソーラーの開発を促した。

図1 茨城県内のメガソーラー(2014年9月時点。画像をクリックすると拡大)。出典:茨城県企画部

 その中でも最大の規模を誇るのが、「水戸ニュータウン」に建設したメガソーラーである。135万平方メートルにも及ぶ大規模な住宅地の開発計画に失敗して、大量の土地が未利用のまま残っていた。そのうちの50万平方メートルをメガソーラーに転用して2015年1月に運転を開始した(図2)。

図2 「水戸ニュータウン・メガソーラーパーク」の全景。出典:ジャパン・リニューアブル・エナジー

 敷地いっぱいに設置した太陽光パネルの数は15万枚を超える。発電能力は関東で最大級の40MW(メガワット)を発揮して、年間の発電量は3200万kWhになる見込みだ。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して8900世帯分に相当する。ニュータウンの当初の計画では1200戸の住宅を建設する予定だったが、実際には10分の1程度にとどまっている。代わりに建設予定数の6倍以上の住宅に電力を供給する役割を担う。

 このメガソーラーを建設したのは、米国の大手金融機関ゴールドマン・サックスの傘下にあるジャパン・リニューアブル・エナジーである。茨城県内だけで3カ所のメガソーラーを運営するほか、1年余りで全国に合計12カ所のメガソーラーと1カ所の風力発電所を稼働させた。

 茨城県内では工業団地の開発計画も各地で進められたが、同様に広い土地が多く残っている。太平洋に近い丘陵地帯に造った「北浦複合団地」が典型例だ。団地の中心部を占める35万平方メートルの土地に、県の公募で選ばれた日立キャピタルなど4社の発電事業者がメガソーラーを建設して2014年6月から運転を開始している(図3)。

図3 「北浦複合団地」の分譲区画(上)、日立キャピタル(中)とNTTファシリティーズ(下)が建設したメガソーラー。出典:茨城県産業立地推進東京本部、日立キャピタル、NTTファシリティーズ

 隣接する4つのメガソーラーが発電しながら、電力を送電するための変電設備は共有する方式をとった。各社の建設・運転維持費を低減するのが狙いだ。全体の発電能力は28MWになり、年間の発電量は2950万kWh(キロワット時)を想定している。工業団地から8200世帯分の電力を再生可能エネルギーで作って送り出すことができる。

 4社のうちNTTファシリティーズは茨城県内の別の工業団地でもメガソーラーを運営している。内陸部にある「宮の郷(みやのさと)工業団地」の3つの区画を使って、2013年から2014年にかけて順次運転を開始した(図4)。発電能力は合計で3.6MWになり、年間に400万kWhの電力を供給する。

図4 「F宮の郷太陽光発電所」の全景(上)、「宮の郷工業団地」の分譲区画(下)。出典:NTTファシリティーズ、常陸大宮市経済建設部

 同じ工業団地の中には、森林組合をはじめ林業関連の施設が数多く集まる。その一角に、日立造船がバイオマス発電所を建設している。地域の森林で発生する曲がり材など用途のない木材をチップに加工して燃料に利用する。発電能力は5.8MWで、地元の生産業者から年間に6万トンの木質チップを調達する予定だ。こうして工業団地が再生可能エネルギーの供給基地に変わりつつある。

 茨城県では太陽光とバイオマスの導入量が大きい。固定価格買取制度の認定を受けた発電設備の規模は太陽光が全国で第2位、バイオマスは第1位になっている(図5)。すでに運転を開始した発電設備でも同様だ。バイオマスでは木質のほかに、廃棄物を活用した発電所が動き出している。さらに風力や小水力のプロジェクトも拡大中で、特に風力は洋上に建設する大規模な発電所の計画が具体的になってきた。

図5 固定価格買取制度の認定設備(2014年12月末時点)
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