震災後に電力会社が相次いで電気料金を値上げした結果、2014年度までの4年間に家庭向けで平均25%、企業向けは38%も価格が上昇した。国民の負担額は3兆円近く増えたが、節電対策が進んで電力の使用量は減り続けている。現在の電気料金はバブル期の1980年代と比べると低い水準だ。
第1回:「電力の88%を火力で作る、燃料費は10社で年間7.3兆円」
電気料金に「燃料費調整制度」が導入されたのは意外に最近のことで、6年前の2009年である。前年の2008年に原油の価格が高騰したことを受けて、燃料費の変動分を電気料金に反映できるようにした。2009年5月の電気料金から、「燃料費調整額」が上乗せされることになった。
ところが2011年3月に発生した東日本大震災によって全国の原子力発電所が運転を停止すると、燃料費調整額だけではコストを吸収できない電力会社が相次いで電気料金の改定に踏み切る。東京電力が2012年4月に企業向けの電気料金を値上げして以降、10社のうち7社が値上げを実施した(図1)。中でも原子力と石油火力の比率が大きい北海道電力と関西電力は2回の値上げを余儀なくされた。
値上げを実施していない3社を含めても、電気料金の平均価格は過去4年間に家庭向けの「電灯」が25.2%、オフィスや工場向けの「電力」は38.2%も上昇した(図2)。家庭はもとより、企業や自治体の多くが電力コストの負担増加に悩まされる状況になっている。
電気料金の上昇によって国民の負担は増えていく。2014年度に電力会社10社が電気料金から得た収入は合計で17.3兆円にのぼり、4年前の2010年度と比べて2.9兆円も増加した(図3)。北海道電力と関西電力の2回目の値上げ効果は2015年度から出始めるため、今後さらに電気料金の負担額は増える見通しだ。
だからと言って、燃料費の安い原子力を再稼働させることが解決策と考えるのは安易に過ぎる。放射能汚染のリスクに対する国民の不安は極めて大きい。使用済み核燃料の適切な処分方法も決まっていない状況では、なおさらだ。電気料金の負担額が3兆円増えても、原子力発電所の再稼働を望まない声は全国各地に広がっている。
国民も電気料金の値上げを甘受しているわけではない。家庭でも企業でも節電対策が浸透して、電力の使用量は減り続けている。一般的な2人以上の世帯を見てみると、1カ月あたりの電気代は震災前の9850円から1万1203円へ13.7%増えたものの、一方で電力の使用量は7.7%減った(図4)。電気料金の値上げ分(25.2%)を節電によって半分程度に抑えている。
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