シャープが「直流家電」実用化へ、AC/DC切り替え機能を持つエアコンなどを開発省エネ機器

シャープは、「直流家電」の実用化に向けて取り組みを本格化させる。AC/DC切り替え機能を持つエアコンやこれらを制御するHEMS、蓄電池システムなどを開発。実用化に向けた取り組みを進めていく。

» 2015年07月27日 17時00分 公開
[三島一孝スマートジャパン]

 シャープは「直流家電」の実用化に向けた取り組みを強化する。新たにAC/DC切り替え機能を持つエアコンや、これらを制御するHEMS(家庭向けエネルギー管理システム)、専用の蓄電池システムなどを開発。実用化に向けた取り組みを本格化させる。

 現在の電力活用の中で使われる電流には2種類のものがある。常に一方向に流れる直流と、1秒間に50回から60回、方向が変わる交流だ。どちらでもエネルギーを送ることができるものの、送配電では交流が主流となっている。現在の送配電網では、火力発電所、水力発電所で発電した交流を変電所で高電圧に変え、送電し、別の変電所などで順次低い電圧に変えていき、家庭では100Vの交流を受ける仕組みになっている。これは交流の場合、電圧が高ければ高いほど損失が減るからだ。

 ただ、最終的に機器の内部で使う電力は、直流の場合がほとんどだ。ノートPCのようにアダプターや、製品内蔵のコンバータを利用し、通常は交流から直流に変換した電力が製品の内部で使われている(関連記事)。

 直流で生まれる電力を交流で変換して送配電し、さらに機器の手前で直流に変換して利用するのは実は多くの電力の無駄を発生させている。特に再生可能エネルギーの場合、太陽光発電などで生まれる電力は直流でそれをパワーコンディショナーなどで交流に変換して家庭内で配電し、機器で直流に変換する仕組みとなっており、無駄が多かった。そこで、最初から最後まで直流で給電することを目指して「直流給電」が大きな注目を浴びた。

直流給電を生かした「直流家電」実用化へ

 ただ、直流給電にはこうしたメリットがある一方で、利用には既存の設備更新が必要であることなどから、実用化が進まない状況が進んでいた。これらに対し、実用化に大きく踏み出そうとするのがシャープの取り組みだ。

 シャープが今回開発したのは、AC/DCのどちらの電流も受けられるハイブリッド型のエアコンと、これらを制御するHEMS、蓄電池システムなどを組み合わせた「直流家電システム」となる。

 太陽光発電などで発電した直流の電力を、直流のまま蓄電池システムに蓄電。それを直流のままでエアコンで利用することができる。家庭内で生み出す電力を、直流と交流のコンバートによって失うことを抑えられる点が最大の特徴だ。またエアコンは既存設備における運用も併用できるように、交流の電力も活用できるようにした「AC/DCハイブリッド機能」を備えており、HEMSにより入ってくる電力に合わせて、制御することで運用できるとしている。これらの「AC/DCハイブリッドシステム」や「HEMS」などは「シャープの独自技術として開発している」(シャープ広報部)としている。

 シャープでは2011年に“節電を極める家”として「シャープ・エコハウス」を設置し「直流給電によるDC家電の検証」などを推進。直流給電および直流家電における取り組みを継続的に推進している。

 なお、直流電力を使用した家庭用電力システムは、2015年7月29〜31日に東京ビッグサイトで開催される「PVJapan2015」で「参考出展」として展示される予定だ。

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