ついに電力会社とガス会社の提携が始まった。売上高で第4位の東北電力が都市ガス最大手の東京ガスと共同で新会社を設立して、東京電力の管内で電力の小売事業に乗り出す。北関東の3県を中心に企業向けの高圧・特別高圧の電力小売から開始する。都市ガスとセット割引も実施する見通しだ。
東北電力と東京ガスは10月に折半出資の新会社を東京都内に設立する。社名や経営体制は未定だが、2016年4月から電力の供給を開始する予定だ。当初は東北に近い北関東の茨城・栃木・群馬の3県を中心に、企業や自治体が利用する高圧と特別高圧の電力を販売する。
すでに電力と都市ガスの両方とも企業・自治体向けの小売は自由化されているため、セット割引による販売が可能だ。さらに2016年4月には家庭・商店向けの低圧電力、2017年4月には都市ガスを含めて小売が全面自由化される(図1)。東京ガスは北関東でも多数の顧客を抱えていることから、東北電力の供給力を生かして両社で電力と都市ガスの小売事業を拡大していく。
東京ガスは電力の小売全面自由化をにらんで関東圏で発電所の増強を進めてきた。現在までに首都圏で200万kW(キロワット)を超える火力発電所を運営しているほか、神戸製鋼所が栃木県内で2019年から2020年にかけて運転を開始する120万kWの火力発電所の電力を全量買い取ることも決めている。2020年には最大500万kWの供給力を確保する計画で(図2)、東京電力管内の最大需要の約1割に匹敵する。
一方の東北電力はLNG(液化天然ガス)を燃料に使う高効率の火力発電所を積極的に増やしてきた。2013年度の発電電力量のうちLNG火力が34%、燃料費の安い石炭火力が41%を占めていて、価格競争力は十分にある(図3)。これから始まる電力の小売自由化によって東北圏の売上は低下する可能性が大きく、市場の大きい関東圏で顧客を開拓する必要に迫られている。
2014年度の売上高では東北電力が2兆1820億円、東京ガスが2兆2925億円で、両社を合わせると4兆4745億円になる。電力会社で2位の関西電力(3兆4060億円)を大きく上回り、トップの東京電力(6兆8024億円)に見劣りしない経営基盤がある。LNGの輸入量でも国全体の20%に達して、東京電力の29%に次ぐ規模になる(図4)。今後はLNGの輸入でも両社が協力して調達力を高める可能性がある。
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