エネルギー分野で9757億円、2016年度の概算要求は省エネに重点補助金

経済産業省は2016年度予算の概算要求のうち9757億円をエネルギー分野に割り当てた。特に重点を置くのが省エネ関連で、前年度から倍増の2429億円を投入して工場の設備更新を促進する。IoTによる製造プロセスの改善にも取り組む一方で、再生可能エネルギーの要求額は微増にとどめた。

» 2015年09月01日 13時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 2016年度のエネルギー分野の概算要求は7つのテーマで構成する(図1)。このうち最大の要求額を盛り込んだのは「省エネルギー」で、前年度予算の1277億円から2429億円へ2倍に増やした。企業や家庭の省エネ対策を推進するための補助金を大幅に拡充して、電力使用量とCO2排出量を削減するのが狙いだ。

図1 エネルギー分野の概算要求(画像をクリックすると拡大して7つのテーマを表示)。出典:経済産業省

 特に力を入れるのは工場の省エネ対策である。2015年度に開始した「エネルギー使用合理化等事業者支援補助金」を410億円から3倍強の1260億円に増額する(図2)。大量のエネルギーを消費する工場では一般のオフィスに比べて省エネ対策にコストがかかるため、設備の導入・更新がさほど進んでいない。

図2 「エネルギー使用合理化等事業者支援補助金」の対象。出典:経済産業省

 政府は6月に策定した長期エネルギー需給見通し(2030年のエネルギーミックス)の中で、工場の省エネ対策と省エネ量を業種別にとりまとめた。対策の項目に挙げた各種の設備を対象に、従来よりも申請しやすい補助金制度を創設して製造業の導入・更新の動きを促進する方針だ。

 省エネ対策に関連した目新しい取り組みとしては、「IoT:Internet of Things(モノのインターネット)」の研究開発にも新たに予算を確保する。IoTは工場の内部などにセンサーを配置して、リアルタイムにデータを収集・解析しながら製造プロセスの改善に生かすことができる(図3)。概算要求に37億円の予算を盛り込んで、企業や大学と連携した産学官のプロジェクトを推進していく。

図3 IoTによるデータ活用イメージ。出典:経済産業省

 一方で再生可能エネルギーの概算要求は1355億円に事項別の要求額を加える計画だが、前年度の1307億円から微増にとどまっている。原子力には総額2002億円を投入して、そのうち発電所が立地する地域に76億円増の1327億円を割り当てた。4月に発表したエネルギー基本計画の「再エネを最大限に、原子力を最小限に」との方針は十分に反映されていない。

 再生可能エネルギーの導入拡大策は太陽光・風力・水力・地熱・バイオマス・海洋の6種類にまんべんなく予算を振り分けた。施策別で要求額が大きいのは風力発電のための送電網整備に105億円、地熱資源開発に100億円といったところだ。新たに「バーチャルパワープラント(仮想発電所)」の実証事業に40億円を要求したが、蓄電池やデマンドレスポンスを組み合わせたシステムに新鮮味は感じられない(図4)。

図4 「バーチャルパワープラント構築実証事業費補助金」の対象。出典:経済産業省

 このほかのテーマでは水素社会の実現に向けて、家庭用燃料電池(エネファーム)や燃料電池自動車の導入補助金に232億円を要求した。化石エネルギーの領域では次世代火力発電の技術開発に145億円の予算を見込んでいる。CO2排出量の削減を目指して、発電効率の高い「石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC:Integrated coal Gasification Fuel Cell combined cycle)」などの技術開発を推進していく。

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