奈良県北西部の町が一大“実験都市”へ、小水力発電や空調自動制御システムなどスマートシティ

奈良県葛城市とリコージャパンは、葛城市民の生活の質の向上と地方創生に向けた連携協力に関する協定を締結。今後は「葛城市ラボラトリー・シティ構想」のもと、葛城市の行政に関する「コスト削減」に向けた業務改善や実証実験を行う。

» 2015年09月16日 15時00分 公開
[三島一孝スマートジャパン]

 葛城市では市の特色を生かしながら地方創生の理念を具現化するための中核となる戦略として「葛城市ラボラトリー・シティ構想」を発表。葛城市ラボラトリー・シティ構想は、市をモニタリングやマーケティング、実証実験を行う「研究の場(ラボラトリー)」として、民間企業や研究機関などに広く開放し、事業化や商品化に必要となるデータ取得などをサポートするという取り組みだ。実証実験の場を得にくい先進的な技術やサービスなどにその場を提供するとともに、その効果により市民の生活の質向上や、産業創出などに生かしていく(図1)。

photo 図1 葛城市ラボラトリー・シティ構想概要(クリックで拡大)出典:葛城市

 その最初のパートナー企業となるのがリコージャパンである。葛城市とリコージャパンは2014年度(2015年3月期)から、葛城市の行政コスト削減に向けた共同プロジェクトを開始し、主に葛城市庁内の業務の効率化を進めてきた。例えば、製造現場でのノウハウである「5S活動」(関連記事)を庁内の業務改善に活用し、事務備品の購買抑制や不要文書の廃棄などで成果を残したという。これらの庁内業務改善の推進は今後も継続する。

エネルギーの地産池消への取り組み

 さらに今後は葛城市ラボラトリー・シティ構想のもと、取り組みの幅を拡大。その第一弾として、2015年10月から、エネルギーの地産地消を目指した小水力発電の実証実験と健康増進・疾病予防に向けた遠隔健康相談の実証実験を開始する。

 小水力発電は、水道施設を活用した実証実験を行う。2015年10月に葛城市内の3つの浄水場でポテンシャル調査を実施。同年12月までに調査結果から発電量算定と事業化計画の立案を行い、2016年1〜3月に事業化準備に入るという。

 一方、施設の電力量削減を目指した照明・空調自動制御システムの実証実験も開始。2015年10月に現状の電力使用量調査や効果シミュレーションを実施し、同年12月までに新庄庁舎の1フロアに機器類を設置し、効果測定を行う。2016年1〜3月で2016年度以降の導入計画を立てるとしている。

 これらの「エネルギーの地産地消」の取り組みにより、市施設の電力料金の削減や売電による歳入の増大を目指す。将来的には自治体PPS(新電力)も視野に入れた事業探索を行う。

 その他、医療・介護分野では、サテライト市役所を核にした遠隔健康相談の実証実験なども行う。まずは2015年10月に新庄健康福祉センターの保健師が、ゆうあいステーションに訪れた住民に対して健康相談に遠隔で対応し、同年11月以降に市民向けサービス拡充の検討と実証を順次実施していく。

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