宮城県の東松島市で最先端のスマートタウンを建設するプロジェクトが始まった。災害公営住宅85戸と病院や公共施設をエネルギー管理システムで結び、太陽光・バイオディーゼル・蓄電池から電力を供給する。市内のメガソーラーの電力も活用して低炭素型の「防災エコタウン」を目指す。
東松島市は宮城県のほぼ中央に位置していて、景勝地の奥松島で有名なところである(図1)。沿岸部を中心に東日本大震災で甚大な被害を受けた地域だが、いち早く復興計画を策定して災害に強い街づくりを推進している。各地区に災害公営住宅の整備を進める中で、最先端のスマートタウンを建設してエネルギーの地産地消を展開する。
市内の「柳の目北地区」に建設中の災害公営住宅85戸を中心に、周辺の病院や公共施設を含めて自営の電力線で結んだマイクログリッドを構築する計画だ。東松島市と積水ハウスが共同で取り組む「東松島スマート防災エコタウン」で、2015年8月の入居を目指して導入プロジェクトが始まっている(図2)。
災害公営住宅のうち15戸の集合住宅の屋根に太陽光パネルを設置するほか、集会場や隣接する調整池でも太陽光発電を実施して地域の電力源に利用する(図3)。非常用にバイオディーゼル発電機を設置する一方、大型の蓄電池も導入して余剰電力を活用する仕組みだ。
すべての設備をCEMS(地域エネルギー管理システム)で制御して、地域内に最適な状態で電力を供給できるようにする(図4)。CEMSと各設備のあいだは新電力が運営する電力線で接続してエネルギーの地産地消を図る。電力が足りない場合には、市内のメガソーラーやごみ焼却発電所などから再生可能エネルギーの電力を調達する方針だ。
CEMSを使って非常時の電力供給も計画的に実行することができる。一時的な停電の場合には太陽光発電・バイオディーゼル発電・蓄電池を組み合わせて通常通りに電力を供給する。
もし災害が発生して停電が長引く状況になったら、住宅向けの供給を停止して、バイオディーゼルの発電量を抑えながら長期の電力供給に備える(図5)。さらに停電が長引いた場合には、避難所になる集会場と病院に限定して、太陽光発電と蓄電池から電力の供給を続ける状態へ移行する。
住宅を含む地域内の設備にはスマートメーターを設置して、30分単位の電力使用量をもとにCEMSで需給バランスを調整することができる。平常時には太陽光発電の余剰電力を蓄電池に充電して夜間に放電すれば、需要のピークカットにもつながる。
東松島市は環境省による「自立・分散型低炭素エネルギー社会構築推進事業」の補助金を受けてスマート防災エコタウンの建設を推進していく。エコタウンの成果を「東松島モデル」として全国に展開する期待がかけられている。
被災地の中では再生可能エネルギーの導入に早くから取り組んできた。津波の被害が大きかった沿岸地域には、復興のシンボルとして2013年8月に「奥松島『絆』ソーラーパーク」が発電能力2MW(メガワット)で運転を開始している(図6)。エネルギーの地産地消を推進して「ネット・ゼロ・エネルギー・シティ」の実現を目指す。
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