千年先へ希望をつなぐ、復興に向けた再生可能エネルギー倍増計画エネルギー列島2014年版(4)宮城

宮城県の太平洋沿岸で進む復興プロジェクトの中で、地域の電力源になる再生可能エネルギーの役割が高まっている。日射量に恵まれた被災地ではメガソーラーの建設が相次いで始まった。2020年までに県内の導入量を2倍の規模に拡大して、災害に強い街づくりを推進していく。

» 2014年05月07日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
図1 東北地方の平均日射量(1平方メートルあたりの1日の発電量、単位:kWh)。出典:宮城県環境生活部、NEDO

 東北地方の中で最も日射量が多いのは、宮城県から岩手県の太平洋側である(図1)。東日本大震災で甚大な被害を受けた地域は日射量に恵まれている。復興を進める中で災害に強いエネルギーインフラを構築することが求められ、太陽光発電に注目が集まった。

 被災地の1つ、宮城県南部の岩沼市で「千年希望の丘」と呼ぶ復興プロジェクトが2012年から始まっている。先進的な復興モデルを千年後の子供たちに残すことを願って命名したもので、がれきを活用した丘を造成して沿岸部を津波から守る構想だ。その丘の一角に大規模なメガソーラーを建設する計画が進んでいる。

 震災前は農地だった場所だが、津波による塩害と地盤沈下によって農業に利用することが困難になってしまった。そこで岩沼市が復興プロジェクトの1つとしてメガソーラーの誘致を決めて、「いわぬま臨空メガソーラー」の開発が始まった(図2)。すぐ近くに仙台空港があり、岩沼臨空工業団地にも隣接している。

図2 「いわぬま臨空メガソーラー」の建設予定地。出典:岩沼市

 総合商社の丸紅が事業者に選ばれて、敷地面積43万平方メートルの区画に28MW(メガワット)の巨大なメガソーラーを建設する(図3)。年間の発電量は2900万kWhに達して、一般家庭で8000世帯分の電力を供給することができる。岩沼市の総世帯数(1万6500世帯)の約半分をカバーできる発電量になる。

 2014年4月に工事が始まり、1年後の2015年4月に運転を開始する予定だ。発電した電力は通常時には電力会社に売電する一方、災害時には地域内に電力を供給する。岩沼市ではメガソーラーを中核に、エネルギー自立型の「エココンパクトシティ」を2020年までに完成させる計画である。

図3 「いわぬま臨空メガソーラー」の完成イメージ。出典:丸紅

 被災地の復興をメガソーラーで推進する取り組みは県内各地に広がってきた。日本三景の松島を望む東松島市では、2MWのメガソーラーが復興のシンボルとして2013年8月から運転を開始している。

 もとは海に面して公園があった場所だが、津波による浸水で地域全体が壊滅的な被害を受けた。東松島市は土地の有効利用と地域の電力供給を目的にメガソーラーの誘致を決めて、『奥松島「絆」ソーラーパーク』を建設することにした(図4)。このプロジェクトでも総合商社の三井物産が発電事業者として運営にあたっている。

図4 『奥松島「絆」ソーラーパーク』の全景。出典:東松島市

 さらに市内の公共施設にも再生可能エネルギーを導入して、「MATSUSHIMA自然エネルギーパーク」を展開する構想がある。駐車場を利用したカーポート型の太陽光発電をはじめ、小型風力発電・太陽光パネル・蓄電池を組み合わせた「スマートポール」を市役所など10カ所に設置する。いずれの場所も防災拠点になる。

 こうした市町村の取り組みと並行して、県全体でも復興対策として再生可能エネルギーの導入に力を入れている。2014〜2020年度の7年間で導入量を倍増させる計画を推進中だ。太陽光・バイオマス・水力・風力・地熱を合わせて2020年度までに708MWの発電規模に拡大させる目標で、このうち3分の2にあたる468MWを太陽光発電で補う。

 宮城県庁みずから太陽光発電事業に乗り出している。南部の白石市にある県有地に、発電能力が1MWの「白石太陽光発電所」を2013年12月に稼働させた(図5)。一方で県庁舎などの屋根を発電事業者に貸し付ける事業も2014年度から開始する。最初の対象になる12カ所の施設を合計すると1MWの発電規模になる見込みだ。

図5 「白石太陽光発電所」の全景。出典:宮城県企業局

 豊富な日射量と未利用の資源を生かして、固定価格買取制度の認定設備も太陽光を中心に順調に拡大している(図6)。太陽光発電は全国で18位、バイオマス発電は9位まで上昇した。すべての設備が稼働すると、宮城県全体の3割の家庭で使用する電力を供給できるようになる。

図6 固定価格買取制度の認定設備(2013年12月末時点)

*電子ブックレット「エネルギー列島2014年版 −北海道・東北編 Part1−」をダウンロード

2016年版(4)宮城:「バイオマス発電がリアス式の海岸へ、太陽光や潮流も地域の電力源に」

2015年版(4)宮城:「太陽光で電力自給率100%に、被災地が最先端のスマートタウンへ進化」

2013年版(4)宮城:「被災地をエネルギー100%自給都市に、松島から気仙沼まで広がる再生計画」

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.