太陽光で電力自給率100%に、被災地が最先端のスマートタウンへ進化エネルギー列島2015年版(4)宮城(1/2 ページ)

宮城県で太陽光発電が急増中だ。固定価格買取制度による認定設備の発電規模は1年間で4倍以上に拡大して全国で第4位になった。沿岸部を中心に災害に強いスマートタウンの建設計画が広がり、新設した津波避難タワーの屋上にも太陽光パネルを備えて電力を自給自足する体制が整いつつある。

» 2015年05月12日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 太平洋沿岸に広がる石巻市の海岸から400メートルほどの場所に、「津波避難タワー第1号」が3月下旬に完成した(図1)。今後も大地震によって津波が発生する事態に備えるために、避難用の高台や高層ビルを確保しにくい地域に建設を進めている。高さが13メートルある高床式の住居になっていて、屋上と合わせると約200人が避難できる。

図1 「津波避難タワー第1号」の完成イメージ(左)と完成後(右)。出典:石巻市総務部

 屋上の一角には太陽光パネルと蓄電池を設置して、停電時にも3日間は照明などを利用することが可能だ。もちろん室内には飲料水などの防災用品を備えている。石巻市では2015年度中に沿岸部の4カ所に津波避難タワーを整備する計画で、災害時にも地域内で電力を自給自足できる体制を強化していく。

 東日本大震災で甚大な被害を受けた石巻市は再生可能エネルギーを取り入れた「世界最先端のエコ・セーフティタウン」を目指して復興計画を推進している。市内の各地区に太陽光発電設備を拡大しながら、地域全体のエネルギー需給状況をシステムで統合的に管理できるようにして電力を安定的に供給する(図2)。

図2 石巻市の「エコ・セーフティタウン構想」(画像をクリックすると拡大)。出典:石巻市震災復興推進本部

 同様のエコタウン計画は隣の東松島市でも始まっている。海岸線から1キロメートルほどの地区に、災害公営住宅85戸を建設するのと合わせて、太陽光発電と大型蓄電池を導入する計画だ(図3)。住宅の屋根や地区内の調整池にも太陽光パネルを設置して、合計で470kW(キロワット)の発電能力を備える。

図3 「東松島スマート防災エコタウン」の完成イメージ(上)と電力供給システム(下)。出典:東松島市復興政策部、積水ハウス

 さらにバイオ燃料を使える非常用の発電機を導入するほか、地域のごみ焼却発電による電力を調達して再生可能エネルギーを最大限に利用する方針だ。地区内にある4カ所の病院や公共施設とのあいだは自営の電力線で接続して、災害時にも3日間は電力供給を継続することができる。災害公営住宅には2015年8月から入居が始まる予定で、地区内の住宅間で電力融通を可能にする日本で初めての取り組みになる。

 宮城県では太平洋沿岸部と中山間部で日射量が多く、全国平均を上回る発電量を期待できる地域が広がっている(図4)。しかも東北の中では森林率が最も低い57%にとどまり、それだけ太陽光発電に適した平地が数多く存在する。他県と比べてバイオマスや小水力よりも太陽光を導入しやすい環境にあるわけだ。

図4 宮城県の太陽光エネルギー賦存量。出典:宮城県環境生活部
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