地熱開発の補助金が48地域に拡大、人口117人の離島でも発電と熱水利用自然エネルギー(1/2 ページ)

2015年度に総額28億円で実施する地熱開発の補助金が全国の48地域に確定した。すでに37地域が決まっていたが、新たに11地域が加わった。11地域のうち九州が6カ所で最も多く、その中には鹿児島県の薩摩硫黄島における地熱発電と熱水利用の開発プロジェクトが含まれている。

» 2015年09月30日 07時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 日本は地熱エネルギーの資源量が世界で3番目に多く、火山地帯を中心に地熱発電や熱水を利用した事業の開発が各地で動き始めている。そうした地熱資源の開発プロジェクトを促進する目的で、政府は2013年度から「地熱開発理解促進関連事業支援補助金」を開始して2015年度は28億円の国家予算を割り当てた。第1次の公募で28地域、第2次で9地域が決まり、最後の第3次の公募で11地域を選んだ。

 11地域のうち北海道が3件、東北と中部が1件ずつ、地熱資源が豊富な九州から6件が補助金の対象に加わった(図1)。この中で開発事業が具体的に進んでいるのは、北海道の知床半島にある羅臼町(らうすちょう)のプロジェクトだ。羅臼町とオリックスが共同で2000kW(キロワット)級の地熱発電の可能性を調査しながら、発電後の熱水を中学校で利用するための設備の詳細設計を補助金で実施する。

図1 「地熱開発理解促進関連事業支援補助金」の対象に新たに選ばれた11の地域と対象事業の概要。出典:資源エネルギー庁

 一方の九州では離島で進める地熱発電プロジェクトが対象に選ばれた。本土から南へ50km(キロメートル)ほどの場所にある「薩摩硫黄島」で、正式名称は「硫黄島」だが、東京都の硫黄島と区別するために「薩摩」を付けて呼ぶのが一般的だ。東西6km、南北3kmの島の中に2つの火山が活動している(図2)。67世帯の117人が暮らし、九州電力の火力発電設備(300kW×2基)が主力の電源になっている。

図2 「薩摩硫黄島」の位置(左)と全景(右)。出典:三島村

 この薩摩硫黄島で建設大手の大林組が地熱発電事業を計画している。発電所の建設に向けて掘削調査を実施する準備の一環で、島民の理解を得るための説明会や見学会に補助金を利用する。さらに発電後の熱水を利用した地域振興策も検討して、地熱発電の導入効果を高めていく。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.