次世代エネルギーを事業の中核へ、覚悟を決めたトヨタの環境戦略(前編)電気自動車(1/3 ページ)

トヨタ自動車はエンジン車から燃料電池車などの次世代車への切り替えや、水素・再生可能エネルギーの積極的な利用など、意欲的な戦略目標を織り込んだ「トヨタ環境チャレンジ 2050」を発表した。本稿ではその内容についてトヨタの次世代車開発と水素・再生可能エネルギーの利用という観点から前後編で紹介する。

» 2015年10月19日 07時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 2050年に新車のCO2排出量を2010年比で90%削減し、同時にガソリン・ディーゼルエンジン車をほぼゼロにする――。トヨタ自動車(以下、トヨタ)は2015年10月14日、東京都内で「トヨタ環境フォーラム 2015」を開催。環境問題や持続可能な社会の実現に向けた取り組み「トヨタ環境チャレンジ 2050」(以下、環境チャレンジ)を発表した。

「トヨタ環境フォーラム 2015」

 その名の通り2050年までを見据えた長期計画であり、自動車そのもののCO2排出量削減に加え、生産工程における再生可能エネルギーの積極的な活用など、具体的かつ非常に意欲的な取り組みが示された。特に2050年には、現在の販売台数の大半を占めるガソリン・ディーゼルエンジン車(以下、純エンジン車)をほぼゼロにし、同社の主力車種をハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCV)などの次世代車に切り替えるという点が大きい。

 こうしたトヨタの環境チャレンジは6つの取り組みから構成される。本稿ではその中から特にエネルギー分野に関わりの深い領域として、次世代自動車開発と再生可能エネルギー・水素の活用という観点から前後編で紹介していく。

ベースとなるのはハイブリッド技術

 今回発表した環境チャンレンジの中軸となるのが、2050年に販売する全ての新車の走行時平均CO2排出量を、2010年比で90%削減するという戦略だ。この90%削減を実現するためのアクションの1つとして、先述したように2050年に向けて主力車種をHV、PHEV、FCV、EVなどの次世代車に切り替え、純エンジン車はほぼゼロにしていく(図1)。

図1 トヨタの次世代車の開発計画(クリックで拡大)出典:トヨタ自動車

 この取り組みのベースとなり、今後の次世代車の展開に向けた鍵となるのが、「プリウス」などに代表されるHV車の技術開発だ。トヨタが1997年に世界初の量産HV車として発売し、国内ではエコカーの代名詞となったプリウス。現在トヨタはこのプリウスの開発で培ったHV技術を、コンパクトカーから商用車まで全カテゴリーの車種に展開している。

 トヨタのHV車の世界累計販売台数は、2015年7月時点で800万台を突破した。これを同クラスのガソリン車と比較した場合、CO2排出抑制効果は累計5800万トンに及ぶという。また、2015年末に国内販売が始まる新型プリウスは、先代を大きく上回る走行燃費40km(キロメートル)/l(リットル)を達成するといわれている。トヨタは今後もこうしたHV車の燃費性能の向上によるCO2削減への貢献や、コスト削減などの技術開発に注力していく。そして2020年にはHV車の世界累計販売台数を現在2倍近い1500万台に伸ばす計画だ(図2)。

図2 2020年にHV車の世界累計販売台数を1500万台へ(クリックで拡大)出典:トヨタ自動車

 しかしこの普及計画についてトヨタは「次世代車の普及に先駆け」という文言を付け加えた。エコカーとはいうものの、動力源としてモーターより内燃機関に比重を置くHV車だけでは、当然ながら2050年に90%のCO2削減を達成できるはずがない。トヨタ“本当の次世代車”として見据えるのはPHEV、EV、FCVだ。そしてこれらの車種にはHV技術が活用できる。世界の自動車メーカーの中でもトヨタの強みとして確立しているHV技術をコア技術に、次世代車の開発を加速させる狙いだ。

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