ダイソンが固体電池実用化に本腰、米ベンチャー企業を完全子会社化蓄電・発電機器

英国ダイソンは2015年10月23日、固体電池技術の研究開発を進める米国Sakti3を完全子会社化すると発表した。Sakti3は電池技術開発ベンチャーで、プロトタイプとして開発した全固体電池は、バッテリー密度で1100Wh/l以上を実現したという。

» 2015年10月26日 13時00分 公開
[三島一孝スマートジャパン]

 今回ダイソンが完全子会社化を決めた米国のベンチャー企業であるSakti3は、ミシガン大学発の電池技術のベンチャー企業で、バッテリー技術に関する論文を100件以上発表している。

 2006年に自動車のバッテリー効率を向上させるため、数理最適化スキームの研究を開始し、その研究過程で、従来のリチウムイオン電池の電解液の代わりに、固体電解質を用いる全固体電池を開発した。その後、コスラベンチャーズ、ベリンジア、伊藤忠商事、ゼネラルモーターズ(GM)、ダイソンなどから出資を受けて、全固体電池を製造するパイロットラインを構築し、実用化に向けた開発に取り組んできた。プロトタイプとしては、Sakti3の開発した全固体電池は、バッテリー密度で1100Wh/l以上を実現したとしている。

Sakti3のバッテリー技術の強み

全固体電池をダイソン製品に搭載?

 ダイソンでは、2015年4月にSakti3に対して1500万ドル(約18億円)の投資を行うことを発表(関連記事)していたが、今回さらに出資を増やし、完全子会社化した。完全子会社化により、新しい電池プラットフォームの研究開発に注力し開発速度を上げるとともに、ダイソンの将来の製品への搭載を進めていく方針だ。

 ダイソンの創業者兼チーフエンジニアであるジェームズ・ダイソン(James Dyson)氏は「革新的なテクノロジーを生みだし続けるためには、進化したコアテクノロジーが必要。ダイソンでは過去に2億ポンド(約380億円)以上をダイソン デジタルモーターの研究開発に投資し、これが成功原動力となってきた。電池においても、同じことを実現したい。Sakti3は電池技術において飛躍的な進歩を達成している。Sakti3とダイソンが協力することで、この電池技術を実用化していく」とコメントしている。

 過去5年間、ダイソンは本社の次世代電池研究施設でコードレスクリーナーやロボット掃除機の電池技術の最適化と開発を進めてきた。今後は、Sakti3の開発チームとともにプロトタイプ固定電池テクノロジーの研究開発を進め、新規および既存技術に取りいれていく予定だ。

 現在のリチウムイオン(Li-ion)技術は、1991年にソニーが世界で初めて商品化。多くの電子機器に利用されるようになっている。しかし、現行のリチウムイオン電池には、サイズ、重量、充電時間、容量、寿命に技術的な限界が見えつつある。全固体電池技術は、USBフラッシュドライブやマイクロチップなどに採用されている。従来の電池と同様、リチウムイオン技術を採用しているが、電解液ではなく固体リチウムの電解質を用いていることが特徴だ。固体電解質はより多くのエネルギーをバッテリーセルに蓄えることを可能とするため、注目を集めている。

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