雪解け水が1400世帯分の電力に、豪雪地帯のダムで小水力発電自然エネルギー(1/2 ページ)

長野県の北部にある大きなダムの直下で小水力発電所の建設工事が進んでいる。36年前からダムの放流水を利用した発電所が稼働中だが、春先の雪解け水が大量に余って使いきれない状態だった。ダムからの水流を分岐する形で2つ目の発電所を建設して、2017年3月に運転を開始する。

» 2015年11月05日 11時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 高い山々に囲まれた長野県では、川を流れる豊富な水量を生かして水力発電の導入が活発だ。特に最近はダムや農業用水路を利用した小水力発電所の新設計画が相次いでいる。県の企業局は北部の長野市にあるダムの直下で新しい小水力発電所の建設工事を10月末に開始した。

 標高3000メートル級の白馬連峰の東側にある「奥裾花(おくすそばな)ダム」が建設場所だ(図1)。もともと洪水対策のために造ったダムで、放流水を利用した「奥裾花発電所」が1979年から運転を続けている。最大で毎秒4立方メートルに達する放流水を使って、約50メートルの落差で1700kW(キロワット)の電力を供給することができる。

図1 「奥裾花ダム」と周辺地域。出典:長野県企業局

 このダムの周辺は全国でも有数の豪雪地帯で、近くにはスキー場も多くある。春先には雪解け水が大量にダムへ流れ込むが、従来は用途がないまま下流に放流してきた。そこで既設の発電所の隣に「第2発電所」を建設して、自然のエネルギーを最大限に活用する(図2)。

図2 「奥裾花ダム」の直下に併設する2つの水力発電所。出典:長野県企業局

 第2発電所では最大で毎秒2.5立方メートルの水流を取り込む。発電能力は980kWになり、年間に500万kWh(キロワット時)の電力を供給できる見込みだ(図3)。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して1400世帯分に相当する。既設の発電所は715万kWhの電力を供給できることから、第2発電所が稼働すると1.7倍の発電量になる。

図3 「奥裾花第2発電所」の設置イメージ。出典:長野県企業局

 ダムから既設の発電所までは堤体の側面に沿って取水管が設けられている。この取水管を分岐させて、第2発電所にも水を供給できるようにする(図4)。運転開始は2017年3月の予定で、発電した電力は固定価格買取制度を通じて売電する。年間の売電収入は1億4700万円を想定している。建設費は12億2000万円かかるが、維持費を加えても年間に6700万円の利益を出せる見通しだ。

図4 「奥裾花第2発電所」の水の流れ。出典:長野県企業局
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