水素エネルギーで日本をリード、太陽光発電も全国一の導入量エネルギー列島2015年版(40)福岡(1/4 ページ)

福岡県では早くから水素エネルギーの開発に取り組んで、先端的なプロジェクトを数多く推進中だ。太陽光・風力・バイオマスを使ってCO2フリーの水素の製造も始まった。沿岸部では大規模なメガソーラーが相次いで運転を開始して、内陸部の浄水場やダムには小水力発電も広がり始める。

» 2016年01月26日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 水素エネルギーの拡大に向けて注目を集める2つのプロジェクトが福岡市で進んでいる。1つは九州大学が福岡市内の伊都(いと)キャンパスに展開する「水素ワールド」である(図1)。燃料電池車や燃料電池システムの実証設備のほか、太陽光と風力で作った電力からCO2フリーの水素を製造するシステムが2015年4月に稼働した。

図1 水素エネルギー関連の設備が集まる「水素ワールド」(画像をクリックすると拡大)。出典:九州大学

 この水素製造システムは家庭向け燃料電池のエネファームに使われている発電方法と逆の原理で水素を製造する。エネファームが水素と酸素を反応させて電力と水を作るのに対して、水素製造システムでは太陽光や風力で発電した電力を使って水を分解して水素と酸素を作ることができる(図2)。1時間あたりの水素製造能力は1立方メートル(常温常圧状態)である。

図2 水素製造システムの外観(上)と内部構成(下、画像をクリックすると拡大)。PV:太陽光発電、PCS:パワーコンディショナ、DC:直流、AC:交流、SW:スイッチ。出典:九電みらいエナジー、日立造船

 トヨタ自動車の燃料電池車「MIRAI」には50立方メートル分の水素を搭載できることから、50時間の稼働でMIRAIの水素タンクを満タンにできる。現在のところ製造能力は小さいが、市販の水素と違って製造工程でCO2を排出しない利点がある。伊都キャンパスには水素ステーションもあって、製造した水素を燃料電池車に供給して運用試験を実施する予定だ。

 太陽光や風力から水素を製造するメリットの1つは、気候によって変動する電力を水素エネルギーに転換して貯蔵できる点にある。九州大学が導入した水素製造システムは通常の送配電ネットワークから商用電力の供給を受けることもできる。システムの内部にある5種類のスイッチを切り替えて、太陽光や風力の電力と組み合わせることが可能になっている。

 この仕組みを使えば、送配電ネットワークを通じて電力を安定供給しながら、余剰電力で水素を製造することができる。再生可能エネルギーと水素エネルギーを有効に利用したCO2(二酸化炭素)フリーのエネルギー供給システムが実現する。

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