2016年は鳥取県の「水素元年」に、人口最少の県が水素社会を目指す意義自然エネルギー(1/2 ページ)

再生可能エネルギーの導入を推進している鳥取県は、2016年を同県の「水素元年」と位置付け、水素の導入に向けた取り組みを本格化する。その第一歩として鳥取ガス、ホンダ、積水ハウスと共同で、再生可能エネルギーで製造した水素を燃料電池車や住宅で利用する実証拠点を整備する。

» 2016年01月27日 07時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]
図1 鳥取県の再生可能エネルギー比率(2014年度の発電量)(クリックで拡大)出典:鳥取県

 鳥取県は県内に火力・原子力発電所がないため、これまで必要な電力の7割以上を県外で発電したものに頼らざるを得ない状況が続いてきた。そこで同県では再生可能エネルギーによる分散電源の導入を推進。2011年度から4年計画で「とっとり環境イニシアティブプラン」を実行した結果、2010年度の時点では24.6%だった再生可能エネルギーによる発電比率を、これを2014年度には31.0%にまで引き上げることに成功している。

 再生可能エネルギーを中心に分散電源への転換を進める鳥取県だが、2015年からさらに水素エネルギーの導入に向けた検討を開始した。2015年7月に「鳥取県水素エネルギー推進ビジョン検討会」を立ち上げ、現在、2030年までの長期ビジョンとして県内への水素利用設備の導入や燃料電池車(FCV)の普及目標などに関するロードマップを策定しているところだ。

 そして鳥取県では2016年を同県の「水素元年」と位置付け、こうした将来の水素社会に向けた第一歩となる実証プロジェクトに着手する。

再生可能エネルギーで水素を製造、FCVやスマートハウスに

 実証プロジェクトの名称は「水素エネルギー実証(環境教育)拠点整備プロジェクト」で、鳥取県、鳥取ガス、ホンダ、積水ハウスの4者が共同で実施する。鳥取ガスが所有する鳥取市五反田町の敷地内で、再生可能エネルギーによる水素製造を行い、燃料電池車やスマートハウスで活用していく(図2)。

図2 実証のイメージ 出典:ホンダ、鳥取ガス、積水ハウス

 具体的には太陽光発電設備とホンダの高圧水電解システムを採用する「スマート水素ステーション(SHS)」で水素を製造し、ホンダのFCV「CLARITY FUEL CELL」などに供給する。さらに同じ敷地内にある積水ハウスの展示場をスマートハウス化して、燃料電池やFCVから住宅へ電力供給も行う。

 再生可能エネルギーを活用した水素ステーション、住宅、FCVを一体整備する水素の利活用実証は全国初の事例だ。来場者に水素の製造から利用までの一貫したプロセスを理解してもらうことで、水素の理解と普及につなげていく。敷地内では水の電気分解により水素を作る実演なども行い、子どもから大人までが水素について学べる環境教育拠点としても運営していく。運営主体となるのは鳥取県と鳥取ガスだ。

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