電気料金に上乗せする「燃料費調整単価」が1年前と比べて全国平均で3円弱も下がっている。原油とLNGの輸入価格が急速に下がったためで、2009年のリーマンショック時に並ぶ低い水準まで戻った。中でもLNG火力の比率が高い東京電力では、家庭向けの燃料費調整単価が5円弱も安くなった。
電力会社が毎月の電気料金に上乗せする「燃料費調整額単価」が直近の1年間で大幅に下がってきた。各社が発表した2016年3月分の調整単価を2015年4月分と比較すると、全国10地域の平均で2.91円も低下した(図1)。標準的な家庭(月間使用量300kWh)では1年前と比べて月間の電気料金が873円も安くなる。
燃料費調整単価が最も大きく下がったのは東京電力だ。家庭向けを中心とする低圧では電力1kWh(キロワット時)あたり4.92円も安くなった。標準的な家庭の電気料金で月に1476円の低下になる。企業向けの高圧でも単価は同じくらい安くなるため、大量の電力を使う企業にとってはコスト削減が一気に進む。
東京電力と同様にLNG(液化天然ガス)火力の比率が高い中部電力でも燃料費調整単価は4.49円下がっている。続いて関西電力が3.64円、沖縄電力が3.34円で、この2社は石油火力の比率が大きい。逆に輸入価格の下落幅が小さい石炭火力の比率が高い北陸電力では1.04円の低下にとどまっている。もともと北陸は電気料金の水準が全国で最も安い。
燃料費調整額は電力会社が電気料金を値上げする時に、その後の3年間の燃料費を想定したうえで、実際の燃料費の変動分を毎月の電気料金に反映させる仕組みだ。火力発電に使う石油・石炭・LNG(液化天然ガス)の輸入価格は2009年のリーマンショックで大幅に下がった後、東日本大震災が発生した2011年末まで値上がりを続けてきた。
石油とLNGは2014年まで高い水準を維持したが、2015年に入って急速に下がり始めた。いずれも震災後のピークと比べて2015年末には2分の1まで下落している(図2)。近年で最も低かったリーマンショック後と同じ水準に戻り、電力会社の業績も回復しつつある。
電力の利用者のメリットも大きい。2016年4月に始まる電力の小売自由化によって、全国で200社を超える事業者が家庭向けの市場に参入する見通しだが、各社の電気料金にも燃料費調整額は上乗せされる。これからも燃料費調整額が下がれば、電力会社から契約を切り替えた後も利用者は恩恵を受け続けることができる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.