蓄電池の“へたり具合”、使いながら分かる診断技術が登場蓄電・発電機器

三菱電機は、蓄電池の使用中に性能劣化度を推定できる「蓄電池性能オンライン診断技術」を開発した。これにより蓄電池の性能の劣化度や残量を推定でき蓄電システムの稼働率向上と用途拡大を実現可能だという。

» 2016年02月18日 11時00分 公開
[三島一孝スマートジャパン]

 三菱電機は2016年2月17日、研究開発成果披露会を開催。その中で新たな技術として「蓄電池性能オンライン診断技術」を紹介した。「蓄電池性能オンライン診断技術」は、蓄電システムの電流と電圧を計測し独自のアルゴリズムで処理を行うことで、蓄電容量や内部で移行の劣化度をリアルタイムに推定する技術である。

 従来の蓄電池システムは、蓄電池性能の劣化を確かめるために蓄電システムを停止して一度残量を空とし、満量とすることで測定する必要があった。また蓄電池残量にしても従来技術では蓄電池の現在の容量に対する割合としての残量を推定する形で、電池容量そのものが劣化することを考えると正確な値を出せなかった。新技術ではこれらの課題を解決し、リアルタイムでの劣化推定を可能とした他、残量についても蓄電池の残りの電気量を誤差1%以内で出すことができるようになったという(図1)。

photo 図1 蓄電池性能の劣化度推定技術の従来と今回の違い 出典:三菱電機

 ポイントとなっているのが、畜電池の能力を推定するアルゴリズムである。蓄電池がためている電気量を推定する仕組みとして、電流を積算し算出する方法と、電圧と電池特性から算出する手法がある。しかし、電流を積算する方法では測定電流の誤差を蓄積してしまう点、電圧と電池特性については、容量の劣化によって誤差が生じる点が架台となっていた。今回三菱電機が開発したアルゴリズムでは、これらの両方の手法を統合し、測定電流と蓄電容量の誤差を同時に推定し補正することが可能となったことが特徴である。これにより高精度な推定が可能となった。

 アルゴリズムでは、電流と電圧の応答速度や変化量と、蓄電池の劣化具合や残量との相関関係を見つけ、徐々に誤差を修正することで正しい数値を見つけ出していくという仕組みを取る。「リチウムイオン蓄電池のような相関関係の見えやすい蓄電池には合っている技術だ。また使い方としても電流や電圧の変化量が多い方が早く誤差を修正しやすいという特徴を持っている」(担当者)としている(図2)。同技術では国内特許2件、海外特許2件を取得しているという。

photo 図2 画面左が電流と電圧の測定値、この変動の様子から蓄電容量の推計値を出す。画面右が蓄電容量の推計値で、緑の点線が正しい値。最初は誤差が大きかったが、蓄電と放電を繰り返すたびに徐々に誤差が小さくなってきている様子が分かる(クリックで拡大)出典:三菱電機

 さらに、電池の劣化や残量などを正確に計測するためには、さまざまなデータを取得しなければならないが、今回の技術では基本的に電圧と電流を計測するだけで、電池の劣化具合や残量を推定することができるという。担当者は「新たな計測機器などを設置せずに使えるところがこの技術の利点の1つだ」と述べている。

 用途としては、電気自動車(EV)などの他、風力や太陽光発電プラント向け蓄電システムなどへの利用を想定している。2020年度までの実用化を目指すとしている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.