150キロメートルの距離を越えて、木質バイオマス発電の電力を村から東京へ自然エネルギー(1/2 ページ)

35年間にわたって交流を続ける東京都の世田谷区と群馬県の川場村が電力でも連携を図る。川場村で2017年1月に稼働予定の木質バイオマス発電所の電力を世田谷区に供給する計画だ。世田谷区は再生可能エネルギーの利用率を2024年度に25%まで高める目標を掲げている。

» 2016年02月22日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 世田谷区(せたがやく)は東京23区で最も多い88万人の人口を抱えている。1981年に第2のふるさとづくりを目指して、北へ約150キロメートル離れた群馬県の川場村(かわばむら)と「縁組協定」を結んだ。この協定を通じて川場村でレクリエーション施設の「世田谷区民健康村」を共同で運営するなど、区民と村民の交流を深めてきた(図1)。

図1 川場村にある「世田谷区民健康村」の施設。出典:農林水産省

 川場村は面積の88%を森林が占める典型的な農山村で、衰退する林業を再生するために「グリーンバリュープログラム」を2012年に開始した。東京農業大学と清水建設をパートナーに加えた産学官の連携によって、地域の森林資源を活用したエネルギーの地産地消に取り組むプロジェクトである(図2)。その中核になる木質バイオマス発電所の電力を世田谷区に供給する。

図2 川場村で実施する「グリーンバリュープログラム」の全体像。出典:清水建設

 グリーンバリュープログラムでは川場村の山中にコンビナートを整備して、地元の森林組合が管理する民有林から間伐材を集める。製材した後の端材や製品に使えない低品位材をバイオマス発電の燃料に利用する計画だ。当初は45kW(キロワット)の小規模な発電設備を建設して、2017年1月に運転を開始する予定である。

 バイオマス発電の設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)を標準の80%で計算すると、年間に30万kWh(キロワット時)の電力を供給することができる。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して80世帯分に相当する。世田谷区の総世帯数(46万世帯)と比べてわずかな量に過ぎないが、両地域の課題解決に向けた新たな一歩になる。

 世田谷区と川場村は3月中をめどに事業体制の検討に着手する。川場村で発電した電力を世田谷区民が購入できる仕組みのほか、両地域の住民が発電事業に参加できる方法についても具体案をまとめて早期に実施する考えだ。

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