ガソリンスタンドに代わる水素スタンドの拡大に向けて、政府は事業者が守るべき技術基準を改正した。再生可能エネルギーから水素を製造するような小規模な水素スタンドや、トラックなどを使った移動式の水素スタンドを対象に、技術基準を新設して安全性の高い設備を導入しやすくする。
大量の燃料電池車を普及させるためには、全国各地の道路に面した場所に水素スタンドを数多く展開する必要がある。対策の1つは設置コストの安い小規模な水素スタンドや移動式の水素スタンドを増やすことだ。政府は「高圧ガス保安法」の技術基準を2月26日付で改正して、さまざまな仕様の水素スタンドを安全に整備できるようにした(図1)。
主な改正点は3つある。1つ目は小規模な水素スタンドに対して新たに技術基準を設定した。1日あたりの水素の製造能力が30Nm3(ノルマル・リューベ=水素ガスの体積を表す単位)未満の設備が対象になる。太陽光など再生可能エネルギーから水素を現地で製造して供給する場合などが当てはまる(図2)。
これまで小規模な水素スタンドは天然ガススタンドと共通の技術基準を適用してきた。ただし水素には金属を腐食する特性があることから、天然ガススタンドには適用しない水素スタンド特有の技術基準を追加する。すでに規模の大きい30Nm3以上の水素スタンドに適用している技術基準の一部を引用した。
改正点の2つ目は移動式の水素スタンドに技術基準を新設したことだ。圧縮した水素ガスを搭載したタンクローリー車やトラックから燃料電池車に水素を供給できる設備が対象になる(図3)。従来は水素ガスの輸送を目的にした技術基準しかなかったため、新たに水素を供給する設備に必要な規定を盛り込んだ。
その一方で水素ガスを運搬するための容器に関する規制を緩和した。水素ガスは温度が上昇すると容器を損傷する可能性があり、容器を40度以下に保つことを技術基準で規定していた。性能試験を通じて容器が65度で破裂しないことを前提に、水素ガスを充填・保管・移動する時の温度の上限を40度から65度に引き上げる。
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