日本最大級のダムで水力発電所が全面稼働、3度の延期を乗り越えて電力供給サービス(1/2 ページ)

険しい山が連なる岐阜県の西部で大規模な水力発電所が運転を開始した。貯水量が日本で最大のダムの水を利用して16万kWの電力を供給できる。中部電力が2009年に着工したものの、地下設備に必要な掘削工事が難航したほか、発電機に不具合が生じて、予定から1年9カ月の遅れで稼働した。

» 2016年03月25日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 中部電力で最大の水力発電所(揚水式の水力を除く)が3月24日に営業運転に入った。岐阜県の西部を流れる揖斐川(いびがわ)の上流に建設した「徳山水力発電所」である(図1)。2基の発電機のうち2号機が2014年5月に運転を開始してから、2年近くかかって1号機が稼働した。

図1 「徳山水力発電所」の位置。出典:中部電力

 建設場所は日本で最大級の規模を誇る「徳山ダム」の直下にある。徳山ダムは2008年に運用を開始した治水用のダムで、総貯水容量は日本で最大の6億6000万立方メートルにのぼる(図2)。堤の高さも161メートルに達する。

図2 「徳山ダム」の全景。出典:水資源機構

 大規模なダムの上部から堤の直下に建設した発電所まで、導水路で水を引き込んで発電する方式だ。発電所の建屋は地上にあるが、2基の水車と発電機は地下に設置されている(図3)。1号機は地下90メートル、2号機は地下30メートルにある。

図3 「徳山水力発電所」の建屋。出典:中部電力

 深い場所にある1号機の発電能力は13万9000kW(キロワット)で、浅い場所の2号機は2万4300キロワットだ。両方を同時に運転する場合には水量の制限があるため、合計で16万1900kWになる。これまで中部電力の水力発電所では長野県で運転中の「平岡水力発電所」の10万1000kWが最大だった。

 水力発電の出力を決めるのは水流の有効落差と水量である。徳山水力発電所の1号機は有効落差が182メートルで、2号機の146メートルよりも36メートル大きい。使用できる水量は1号機が最大で毎秒82立方メートルに対して、2号機は約4分の1の毎秒19立方メートルに抑える。両方の合計で毎秒100立方メートルまで発電に使うことができる。

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