バイオガスで下水処理場に電力と熱、高純度に精製してエネルギー効率84%自然エネルギー(1/2 ページ)

兵庫県の神戸市にある下水処理場でバイオガス発電が始まった。下水の処理で発生するバイオガスを98%の高純度に精製した「こうべバイオガス」を燃料に利用する点が特徴だ。電力と熱を同時に作るコージェネレーションシステム24台を使って、1300世帯分の電力と1600世帯分の熱を供給できる。

» 2016年03月30日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 神戸市の「西部処理場」で3月24日にバイオガス発電設備が運転を開始した(図1)。市内に7カ所ある下水処理場の1つで、バイオガス発電を実施するのは2カ所目だ。神戸市が2030年度に市全体のCO2(二酸化炭素)排出量を30%削減(2005年度比)する計画の一環で取り組む。

図1 「西部処理場」の全景。出典:神戸市建設局

 下水処理場では汚泥を発酵させる過程で大量の消化ガス(バイオガス)が発生する。通常は燃料になるメタンのほかにCO2を40%近く含んでいるが、神戸市の西部処理場では精製装置を使って純度98%のメタンガスを作る(図2)。都市ガスと同等の水準までメタンの純度を高めて燃焼効率を引き上げるためだ。特別に「こうべバイオガス」と呼んで、下水処理場で生産量を増やしている。

図2 消化ガス発電の処理フロー。出典:神戸市建設局

 西部処理場には「こうべバイオガス」を燃料に利用する24台のコージェネレーションシステムを導入した(図3)。1台あたりの発電能力は25kW(キロワット)で、合計すると600kWの電力を供給できる。年間の発電量は460万kWh(キロワット時)になり、一般家庭の電力使用量(年間3600kWh)に換算して1300世帯分に相当する。全量を処理場の中で消費して、電力会社から購入する電力量を3割減らす。

図3 消化ガス発電に利用するコージェネレーションシステム。出典:神戸市建設局

 さらにコージェネレーションで供給する熱は汚泥を発酵させる消化タンクの加温に利用する。熱の供給能力は電力に換算して928kWにのぼる。一般家庭の都市ガス使用量(年間400立方メートル)に換算すると1600世帯分に相当する熱量になる。

 高純度に精製した「こうべバイオガス」を使うことで、燃料のエネルギーを電力に変換する発電効率は33%、熱効率は51%に達して、合計で84%の高効率のエネルギー利用を可能にした。CO2排出量は年間で約2400トン削減できる見込みだ。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.