熱で発電するデバイスの実用化が迫る、コストを抑え性能は10倍に蓄電・発電機器(1/2 ページ)

NEC、NECトーキン、東北大学の3者は熱電変換効率を従来比で10倍以上に向上したスピンゼーベック熱電変換デバイスを開発したと発表した。排熱などからから電力を生み出す発電素子としての実用化に向けて大きく前進した他、熱の流れを測るセンサーとして実用的な感度を達成するめどもついたという。

» 2016年04月27日 09時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 使われることなく放出されている未利用熱エネルギーの活用に向けて、熱変換材料の研究開発が進んでいる。こうした材料を使って未利用熱から利用価値の高い電力を取り出せれば、省エネやCO2排出量の削減に大きく役立つからだ。しかし、実用化に向けては発電性能やコストの課題をクリアする必要がある。

 今回、NEC、NECトーキン、東北大学の3者が発表した「スピンゼーベック熱電変換デバイス」はその名称にあるように「スピンゼーベック効果」を使って発電する仕組みだ。スピンゼーベック効果とあは、強磁性材料に温度差を付けることで、磁気の流れとしての「スピン流」が起こる物理現象。2008年に東北大学が発見した。

 スピンゼーベック効果を活用した熱電変換デバイスは、構造がシンプルなため低コストで製作可能で、加工性にも優れるといったメリットがある。一方で大きな課題となっていたのが変換効率の低さだ。そこで3者はまず低価格な原料を用いた材料を開発し、さらに新しい製造プロセスの採用に取り組んだ。その結果、従来比10倍以上と熱電変換効率を大幅に向上することに成功した。

高価な白金を代替するコバルト合金を開発

 従来、スピンゼーベック熱電変換デバイスは、電力を取り出すための電極材料として高価な白金が用いられていた。3者はこの白金を代替するコバルト合金を開発し、大幅なコストの低減に成功しました。さらに、このコバルト合金に磁性の性質を与えることで表れる「異常ネルンスト効果」と呼ばれる熱電効果を「スピンゼーベック効果」と併用することで、白金を利用した素子の10倍以上に熱電変換効率を向上させた(図2)。

図1 コバルト合金によって安価かつ高性能なデバイスに 出典:NEC
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