北アフリカのモロッコで集光型の太陽光発電システムを使ってメガソーラーを建設するプロジェクトが始まる。太陽光を追尾しながらレンズで集光することにより、標準的な太陽電池と比べて2倍以上の発電効率になる。住友電気工業が開発したシステムで、2016年11月に運転を開始する予定だ。
モロッコ王国太陽エネルギー庁(MASEN:Moroccan Agency for Solar ENergy)と住友電気工業が共同で、モロッコ中部のワルザザート(Ouarzazate)市に「1MW(メガワット)集光型太陽光発電プラント」を建設する(図1)。両者は5月4日に契約を締結して、2021年5月まで5年間の実証プロジェクトに取り組む。運転開始は2016年11月を予定している。
ワルザザート市は北大西洋に面した首都ラバトから南へ300キロメートルほど離れた山岳地帯にある。緯度は約30度で日本と変わらないが、雨の少ない砂漠気候のため年間の平均日射量は7kWh/m2(キロワット時/平方メートル)に達する。日本の平均日射量は3.8kWh/m2であることから、2倍近い日射量が得られる場所だ(図2)。
住友電気工業は2015年9月からワルザザート市にあるMASENの研究施設で集光型太陽光発電システムの実証実験を続けてきた。発電能力は20kW(キロワット)で、太陽光の向きに合わせて追尾する架台に太陽電池モジュールを搭載した(図3)。モジュールの面積は合計で70平方メートルある。
新たに建設するメガソーラーは実証実験のシステムの規模を50倍に拡大したものになる。5年間のプロジェクトを通じて発電量の評価やシステムの品質分析を実施する予定だ。砂漠地帯に特有の気候や砂塵の影響を受けずに安定した発電方法の確立を目指す。
すでに実証実験に使った太陽光発電システムでも、砂塵によるモジュール表面の汚れを防ぐ対策を試している。追尾式の架台を回転させて、夜間にはモジュールの表面を下向きに固定させる方法だ(図4)。
その結果、対策を施さない場合には発電効率が5日間で15%も低下するのに対して、対策を実施すると16日間で5%しか低下しないことが実証できた。今後はモジュールの数を大幅に増やした1MWの発電システムで効果を検証する。
MASENは2020年までにモロッコ国内の太陽光発電の規模を2000MWに、さらに2030年には4500MWへ拡大する目標を掲げている。これにより2020年の時点で国内の電力消費量の14%を太陽光発電で供給する計画だ。ワルザザート市に建設する集光型のメガソーラーは将来の規模拡大に向けたモデルケースになる。
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