太陽光発電の出力を10分でゼロに、九州電力の出力制御実証で成果エネルギー管理(1/3 ページ)

九州電力は太陽光発電設備の自動出力制御システムの開発を目的に実施していた実証試験の結果を公表した。出力制御機能付きのパワーコンディショナを利用して指示通りの出力制御が行えた他、短時間で出力をゼロにする緊急出力制御においても電力系統への影響はなかったとしている。

» 2016年05月23日 09時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 九州電力は2016年5月19日、「次世代双方向通信出力制御緊急実証事業」の実施結果について発表した。実際の太陽光発電設備を利用し、出力の自動制御を行えるシステムの開発を目的とした実証事業で、2015年6月〜2016年2月にかけて実施したものだ。九州電力は「良好な結果が得られた」としている。

 固定買取価格制度の開始移行、太陽光発電設備の導入が急速に進んだ。特に九州は導入量が多い地域だ。2016年3月末で接続量は597万kWに達している(図1)。しかし、再生可能エネルギーによる発電設備は天候によって大きく発電量が左右されてしまう。そこで電力網の安定化を図るため、電会社はその地域の電力供給量が需要を上回ることが想定される場合、発電設備の出力を制御できるという制度になっている。

図1 九州(本土)への再生可能エネルギー導入量 出典:九州電力

 しかし、課題となるのが電力会社側に複数の太陽光発電設備の出力を、効率的に制御できるシステムがないことである。こうしたシステムの開発を目的に、政府が実施を決めたのが次世代双方向通信出力制御緊急実証事業だ。給付金を交付して、東京・北陸・関西・九州の4つの電力会社が取り組んでいる。

 開発する出力制御システムの種類は2つある。1つは電力会社が地域の電力需要と発電量を予測しながら遠隔にある発電設備の出力制御を実施するシステムだ。このシステムの場合は、電力会社のサーバから専用回線を通じて指令を発信し、出力制御機能付きのパワーコンディショナ(PCS)を通して出力を制御する(図2)。今回は66kV(キロボルト)以上の発電設備を対象にこの方式の実証を行った。

図2 開発する出力制御システムの概要(クリックで拡大)出典:九州電力

 もう1つは出力制御を配信事業者(アグリゲータ)が代行するためのシステムである。電力会社がサーバ上に作成した出力制御のスケジュールをもとに、配信事業者が対象の発電設備の出力制御をインターネット経由で設定できるようにする仕組みだ。66kV未満の発電設備を対象に実証試験を行った。

 2つのシステムどちらにおいても、出力制御機能付きのPCSが必要になる。今回の実証ではPCSメーカーを公募し、こうした出力制御機能を持つPCSの開発と検証も行っている。合計22社のPCSメーカーが参画しており、九州電力は「全てのPCSが要求仕様を満足した」としている。

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