家庭を中心に電力会社から契約を変更した件数が5月中にも100万件を超える。契約数全体の1.5%とはいえ、市場は着実に変化している。小売電気事業者の登録数も300社を超えて、需要家の選択肢が広がってきた。一方で契約変更にかかわるシステムやスマートメーターの問題が解消できていない。
第61回:「電源構成や電力比較サイトの独立性など、消費者から見た情報提供」
小売全面自由化から2カ月近くが経過して、市場の変化の様子が徐々に見えてきた。電力会社から他の小売電気事業者に契約変更(スイッチング)を申し込んだ件数は5月13日の時点で約90万件に達した(図1)。週あたり5万件程度の増加が続いていて、5月中に100万件を突破する見通しだ。
契約変更の申請が始まった3月と比べると4月以降は勢いが弱まったものの、ほぼ安定した伸びが続いている。新たに自由化の対象になった家庭・商店などの契約数は全国で6260万件にのぼり、そのうちの1.5%が最初の3カ月間に契約を変更したことになる。同様のペースが続くと1年後には5%程度の契約が切り替わっている。
その時点で都市ガスの小売全面自由化がスタートする。電力会社と大手ガス会社を中心に顧客獲得競争が再び激しくなることは確実だ。自由化に向けてガス小売事業者の登録申請が8月1日に始まることも決まった。電力会社に加えて石油元売会社やLP(液化石油)ガス会社をはじめ、電話会社や流通業の参入が予想される。
小売電気事業者の登録数は5月23日の時点で300社を超えた(図2)。すでに主要な事業者の登録はおおむね済んでいる。今後も少しずつ増加するが、合計で400社を上回ることはなさそうだ。むしろ複数の小売電気事業者による提携拡大や事業統合の動きが早くも始まるだろう。
電力会社10社を除く小売電気事業者291社の事業規模を見ると、最大需要電力は1000〜1万kW(キロワット)を見込んでいる事業者が半数以上を占めている(図3)。一般家庭の最大需要電力を5kWで想定すると、200〜2000件の契約数に相当する。小規模な事業者が地域を限定して家庭や商店に電力を供給する一方で、東京電力の管内を中心に大手の事業者が企業向けを含めて電力会社に対抗する構図だ。
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