一般的なプロペラ型の風力発電機は台風などの強風時には稼働できないーー。こうした常識を覆すユニークな風力発電機を開発しているのがベンチャー企業のチャレナジーだ。同社は以前から開発を進めている「垂直軸型マグナス風力発電機」の実用化に向け、沖縄県で日本ユニシスと共同で実証試験を開始する。発電機の性能を検証するだけでなく、同時にIoTや機械学習を活用した「風力発電サービス」の開発も目指す計画だ。
日本ユニシスとベンチャー企業のチャレナジーは2016年5月30日、台風や爆弾低気圧などの強風環境においても発電可能な「次世代風力発電サービス」の開発と事業化を共同で推進していくことに合意したと発表した。同年8月7日から沖縄県南城市で日本ユニシスのIoTサービスと、チャレナジーが開発する風力発電機を利用した実証試験を開始する。
世界の再生可能エネルギーの種類別導入量と比較すると、日本ではあまり風力発電の導入が進んでいない状況にある。その理由の1つとして挙げられるのが、日本では風が一定に吹き続ける場所が少なく、発電に必要な風量が確保しにくいという点である。そしてこうした課題をクリアする新しい機器を開発しているのがベンチャー企業のチャレナジーだ(図1)。
チャレナジーは2014年に創業した企業で「垂直軸型マグナス風力発電機」の開発を進めている。これは円筒を気流中で回転させた時に発生する「マグナス力」を利用する垂直軸型が特徴の発電機で、一般的な風力発電機のようなプロペラ翼を持たない。こうした特徴的な形状により、台風などの強風時でも発電でき、さらに従来設置が難しかった狭いスペースでの利用を可能にすることを目指している(関連記事)。
同社は2016年1月から沖縄県南城市における実証実験の一部費用をクラウドファンディングで募るなど、以前から垂直軸型マグナス風力発電機の実用化に向けた取り組みを進めてきた。2015年12月に強風域を模して実施した風洞実験では、風速20メートル下での性能検証に成功している。
今回の日本ユニシスと取り組む共同実証実験はこうした取り組みの延長にあるものだが、単なる実証ではなく、同時に日本ユニシスの持つIoT関連技術を活用した「次世代風力発電サービス」の開発を目指しているのが特徴である。
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